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山の稜線に立つ登山者が空を見上げ、遠くに積乱雲が発達している写真。青空と灰色の雲のコントラストが印象的。

導入

「天気予報では晴れだったのに、山頂で突然の雨に降られた…」「どのくらいの予報なら登山を中止すべき?」——登山において、天気は最も重要な判断材料のひとつです。しかし、山の天気は平地とは全く異なる特性を持ち、一般的な天気予報だけでは判断が難しいことも多いのが現実。

この記事では、登山向けの天気予報サービスの使い方から、具体的な中止基準、そして現場での天候判断まで、初心者でも実践できる「山の天気の読み方」を徹底解説します。


登場人物紹介

JK
登山初心者。天気予報は見るけど、正直「晴れ」か「雨」かくらいしか気にしていない。
先生
登山歴20年のベテラン。過去に天候急変で怖い思いをした経験多数。天気図を見るのが趣味。

なぜ山の天気は難しいのか

JK
先生、この前の登山で天気予報は晴れだったのに、山頂で雨に降られたんですよ。天気予報って当てにならないんですか?
先生
平地の天気予報をそのまま山に当てはめてはいけない。山の天気には平地とは全く異なる特性があるんだ。
JK
え、そうなんですか?同じ日本なのに?
先生
まず基本として、標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃下がる。これを「気温減率」という。

参考情報: 「山では標高が100m上がるごとに、気温が約0.6℃~0.65℃低下するのが一般的です」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQH2TECn2rh2dXXcF95THM5Q2mz0Zbx5Nhu6WIF0HUkGKJpv0lSxqOxvbPRv4hbZbTM-nEwpaVpiNc2ZDFPxNnFvb2zGiax8ZlRRWdAProDzGkF22HC8VRYKimFdDAaJ7dqraA==

JK
100mで0.6℃…じゃあ3000mの山だと?
先生
平地が25℃だとすると、3000mの山頂では約7℃。さらに風が吹けば、風速1m/sごとに体感温度は約1℃下がる。
JK
えっ、風でそんなに変わるんですか!?
先生
ああ。しかも山では平地の2〜3倍の風が吹くことも珍しくない。平地で風速5m/sでも、山頂では10〜15m/sになりうる。

参考情報: 「風速が1m/s強くなるごとに体感温度は約1℃下がるとされています」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQEDtGJWvm1Gx6aBZjn57B5oknmT8_Gq3frEKoirHypQD4tHno-HN8FdJS27ptVgNJr2GvbVo7hd87cP3W-p4gaIFC4tYwyE-lOZk5ElWV0hvzLrvZFvhWFDNq6nPeo=

JK
ちょっと待ってください。計算すると…平地25℃、3000mで7℃、風速10m/sで…体感温度マイナス3℃!?
先生
その通り。真夏の登山でも、山頂では真冬並みの寒さになることがある。だから山専用の天気予報が必要なんだ。

Image Prompt: 標高による気温変化と風速による体感温度の変化を示すインフォグラフィック。平地25℃から3000m山頂での気温と体感温度を視覚的に表現。


山岳天気予報サービスを使いこなそう

JK
山専用の天気予報ってあるんですか?普通の天気予報アプリじゃダメ?
先生
普通のアプリでは山の天気は分からない。山岳専門の天気予報サービスがいくつかあるから、紹介しよう。

無料で使える「てんきとくらす(てんくら)」

先生
まず登山者に最も使われているのが「てんきとくらす」、通称「てんくら」だ。
JK
聞いたことある!登山指数ってやつですよね?
先生
そうだ。A、B、Cの3段階で登山の快適さを表示してくれる。Aなら登山に適している、Bは風または雨がやや強い、Cは登山に適していない。2,300以上の山に対応していて無料で使える。
JK
便利!じゃあAなら安心して登れるってことですね!
先生
…ここが落とし穴なんだ。登山指数には注意点がある。

参考情報: 「登山指数は特定の時間帯(例: 午前9時)の山頂の天気を基にしており、一日全体の天候や登山道全体の状況を示すものではないため、誤解を招く可能性があります」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQHiR7RrAnzS7TZevGrP9FiHEUHqiyu9PODIO9wpX3D-1vjjGowZgPsKr4qdSosYHh8KiywqRQ29-jaFBTgORA2PNuThvxVe_tPnv0tMXssQFGFcL8URWFz9y3rrP2uzl8q9Adq6UPs=

JK
落とし穴?
先生
登山指数は特定の時間帯、例えば午前9時の山頂の天気だけを基準にしている。一日全体や登山道の状況じゃない。
JK
え、じゃあ朝9時に山頂が晴れてても、午後に雷雨になる可能性は考慮されてないってこと?
先生
その通り。しかも雷の可能性は登山指数に含まれていない。だから「Aだから大丈夫」と過信するのは危険だ。

てんくらの正しい使い方

  • 時間帯ごとの予報を必ず確認する
  • 雷の発生確率は別途チェックする
  • あくまで「目安」として活用し、複数のサービスと併用する

プロも使う「ヤマテン」

JK
もっと精度の高いのはないんですか?
先生
ある。「ヤマテン」は山岳専門の気象予報士集団が運営する有料サービスで、月額550円だ。

参考情報: 「ヤマテンは、山岳専門の気象予報士集団が運営する有料の山岳天気予報サービスです」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFF4AMDewsYXFKkDHsfEYvd97Jrfmsm9i1Y37npQ3WnEZt_iVhhjdQ3339zq1wR2fcVRZ9lDUcjFXJp9mYcutwhKmIZjwkfjZuv1lM91mOGBBsYl9Icht2jFzzaILGiWPpXCw==

JK
有料かぁ…。月550円って高くないですか?
先生
気持ちは分かる。しかし、山岳ツアー会社や山小屋などプロが使っているサービスだ。精度が違う。
JK
何がそんなに違うんですか?
先生
まず、天気マークだけでなく、気象予報士による詳細な解説がつく。「稜線上では午後から風が強まり、ガスがかかりやすい」といった、登山に特化した具体的なリスク情報が得られる。
JK
それは確かに便利かも…。でも、てんくらで十分じゃないんですか?
先生
日帰りの低山ならてんくらでも十分なことが多い。しかし、北アルプスや八ヶ岳など難易度の高い山、テント泊や縦走など長期の山行では、ヤマテンの精度が安心感に直結する。

ヤマテンの主なスペック

  • 月額550円(1週間の無料試用期間あり)
  • 全国330山のスペシャル予報(3日先まで)
  • 気象予報士による詳細コメント
  • 稜線上の風やガスなど登山特化情報

風の動きが見える「Windy」

JK
他にはどんなのがあるんですか?
先生
「Windy」は風の動きや雲の広がり、雨雲の範囲がアニメーションで見られる。無料でも十分使えるし、複数の予報モデルを比較できるのが強みだ。

参考情報: 「Windyは、無料版でも登山に必要な機能が揃っており、風の動きや雲の広がり、雨雲の範囲・強さがアニメーションで視覚的に確認できます」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFVHUUQ_YxU0qtPg2CH4Uq_-B7LYvf4-4aE-OIWsPukqiV6tM1IzN-3Jc6B6ZsNodvn7pKjHhkjsJn6j4tJTUev9QOKLijnWUMS2gWCPDGKWqA6AEnvIw7c41kJjtMyELIaYPYjjFrbTU1khA==

JK
アニメーションで見られるのいいですね!直感的に分かりそう。
先生
特に低気圧がどう動くか、雨雲がいつ山域に到達するかを視覚的に確認できる。前日や当日朝のチェックに最適だ。

サービス比較表

サービス 料金 対応山数 特徴 おすすめユーザー
てんきとくらす 無料 2,300以上 登山指数で視覚的に分かりやすい 初心者、日帰り低山
ヤマテン 月550円 330山 専門家による詳細解説と高精度 上級者、難易度の高い山行
Windy 無料 全世界 風や雲の動きをアニメーションで確認 天気図が好きな人
tenki.jp登山天気 無料 主要山岳 気象庁データ、雷危険度表示 雷リスクを重視する人
JK
結局、どれをどう使えばいいんですか?
先生
正解は「複数を併用する」だ。てんくらで大まかな傾向を見て、ヤマテンで詳細を確認し、Windyで風や雲の動きをチェック。一つのサービスを盲信しないことが大切だ。

参考情報: 「多くの登山者は、一つのサービスに頼り切らず、複数の天気予報サービスを併用して総合的に判断することを推奨しています」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQH3XtIoRaljhHGSWjm4b2Gbis4WhN30r2XjGZOlwbIRtBZ1dk_F7PnYouBSjncW4uEwXx_AHXxDza_r7UfAYknTQoR-1sQLtC5HIdEmkvsqhry3Cf1UY2wM-OsIYuu9LpR8nGcyqI8TdQ-04g==

Image Prompt: スマートフォンで天気予報アプリを確認する登山者の手元。画面にはてんきとくらすの登山指数が表示されている。


登山を中止すべき具体的な基準

JK
先生、正直に聞いていいですか?
先生
なんだ?
JK
「降水確率30%」とか「風速10m/s」とか言われても、どのくらいヤバいのか分からないんですよ。具体的にどうなったら中止すべきなんですか?
先生
良い質問だ。具体的な数値基準を教えよう。ただし、これは絶対的なルールではなく、山の特性や自分の経験、パーティーの力量によって調整が必要だ。

風速の基準

先生
まず風速。15m/s以上は山での行動を避けるべきだ。

参考情報: 「風速15m/sを超える場合は山での行動を避けるべきとされます。風速15m/sは風に向かって歩けないレベルで、石が飛んでくる危険もあります」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQHr0vOX3jIAHUV8BQmbxty8tL4GFmgAkfGD_QdmZjf7Ue5JM5oq6FXqduaXp3w7A9YlHTfne-ywBX6KFnxqCsMG5tX4Cqgk-tquUEnfgFMDvqpVHggF3worppZi580cFGKnGUzw8A5G8ntlNbnPxQ0oO3P4NuM0snfyG6Pnc9j-X1TaQTq2fPU1mMux8vclELJbQ-g=

JK
15m/sってどのくらいの風なんですか?
先生
傘が差せないレベルと覚えておくといい。風に向かって歩くことが困難で、転倒の危険もある。稜線では石が飛んでくることもある。
JK
石が飛んでくる!? それはヤバい…。
先生
風速10m/s以上でも要注意だ。体感温度が10℃下がることを思い出してほしい。稜線歩きはコース変更を検討すべきレベルだ。

風速の目安

風速 状況 判断
5m/s以下 木の葉が揺れる程度 問題なし
5〜10m/s 砂埃が舞う、小枝が動く 稜線では注意
10〜15m/s 傘が差しにくい 稜線歩きの変更を検討
15m/s以上 歩行困難、転倒の危険 中止または撤退

降水確率の基準

JK
降水確率はどうなんですか?30%くらいなら大丈夫ですよね?
先生
これは山の特性によって変わる。森林限界を超える山—つまり木がなくなって岩と草だけになるような高山—では、麓で降水確率60%以上なら中止という意見が多い。
JK
60%って結構高くないですか?半分以下なら行ける的な?
先生
そう思うだろう?しかし、麓で60%なら山頂ではほぼ確実に降る。しかも強風や雷を伴う可能性がある。30%以上で見送るという慎重な登山者もいる。
JK
30%でも見送る人がいるんですか!?
先生
安全を優先するならそのくらい慎重でもいいと思う。特に初心者のうちは、条件の良い日を選んで登るのが鉄則だ。

気象警報の基準

先生
最も分かりやすいのは気象警報だ。前日17時時点で、登山エリアに大雨、洪水、暴風などの警報が出ていれば、中止一択だ。
JK
警報は分かりやすいですね。注意報はどうですか?
先生
注意報でも慎重に判断すべきだ。特に雷注意報は要警戒。「上空に寒気が流れ込む」「大気が不安定」という言葉が天気予報に出たら、午後の雷雨を覚悟すべきだ。

降水量の基準

先生
降水量も重要だ。24時間以内の降水量が50mmを超えた場合は、沢沿いのルートは避けるべきだ。
JK
50mmってどのくらいですか?
先生
土砂降りが1時間で約15mm。これが6時間続くと90mm。連続雨量90mmを超えると、土砂崩れのリスクが急激に高まる。火山灰地では30mmでも崩れることがある。
JK
土砂崩れは怖い…。

中止基準まとめ

項目 中止基準 備考
風速 15m/s以上 10m/s以上で稜線は要注意
降水確率 60%以上(森林限界超えの山) 30%以上で見送る人も
気象警報 発令時は中止 注意報も慎重に判断
降水量 24時間50mm超え 沢沿いルート回避
予報があれば中止 特に稜線は危険

現場で読む天候変化のサイン

JK
先生、天気予報を見て出発したあとに天気が急変したらどうすればいいんですか?
先生
いい視点だ。山では「観天望気」といって、空を見て天候の変化を予測する技術が重要になる。
JK
観天望気…なんかカッコいい響き。
先生
特に覚えておいてほしいのは、危険を示す雲の種類だ。

即座に撤退すべき雲

先生
まず、積乱雲。入道雲とも言うな。もくもくと大きく発達して、上部がカリフラワーやソフトクリームのような形になる。

参考情報: 「積乱雲(せきらんうん・入道雲)・かなとこ雲は、即座の撤退が必要です」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFoQSngWP4LSOhnVjNFtvvzMmStw3Ouzuo2dra0lDLnrPJ4jqCE2Qurt4EOHS7Mu0Nza9cdDN17csMWmOCRQArbX8ka-oIMRJ-QrrGBG3VjhZCP2FkVz_WWF8S-pvbAhj4d3vMO7FFNA4jqTqbA5UGHN2tTxUR_ETwszKV11QE=

JK
ああ、夏によく見るやつですね。
先生
この雲を見たら即座に撤退だ。雷、大雨、突風、雹などの激しい気象現象を引き起こす。特に「かなとこ雲」—積乱雲の上部が横に広がった形状—は非常に危険だ。
JK
かなとこ雲…聞いたことあるかも。金床みたいな形のやつ?
先生
その通り。風上側にこれが見えたら、すでに逃げ遅れている可能性がある。

悪天候の前兆を示す雲

先生
次に覚えておくべきは、悪天候の前兆を示す雲だ。
JK
前兆…予告みたいなものですか?
先生
ああ。まず「レンズ雲」または「笠雲」。山頂付近にレンズ状に現れる雲で、強風と悪天候の前兆だ。
JK
富士山に雲がかかってる写真でよく見るやつですね!
先生
それだ。「巻積雲」、いわゆる「うろこ雲」や「いわし雲」は天候下り坂の兆候。「乱層雲」—灰色の雨雲—は本格的な雨の到来を示す。

登山中の「やばい予兆」

JK
雲以外にも予兆ってあるんですか?
先生
ある。特に覚えておいてほしいのは3つだ。
  1. 急に風が止む:次に突風が来る前触れの可能性がある
  2. 雲の色が濃くなり、モコモコ膨らむ:雷の兆し
  3. 気温が一気に下がる:寒冷前線の接近
JK
急に風が止むのがヤバいって、なんか意外ですね。静かになったら安心しそう。
先生
むしろ逆だ。嵐の前の静けさというやつだな。経験を積むと、この「静けさ」に違和感を感じるようになる。

Image Prompt: 山の稜線上に発達する積乱雲(かなとこ雲)の写真。雲の上部が横に広がり、威圧感のある姿。


雷から身を守る

JK
先生、雷ってどのくらい危険なんですか?正直、そんなにビビる必要あります?
先生
…君は稜線で雷に遭ったことがないからそう言えるんだ。私は何度か経験があるが、あれほど怖いものはない。
JK
そんなに?
先生
雷は相対的に高い場所に落ちる。稜線上では登山者が最も高い存在になる。つまり、避雷針のようなものだ。

雷に遭遇する前の対策

先生
まず最も重要なのは、雷に遭遇しないこと。事前対策が最優先だ。
JK
当たり前のこと言ってません?
先生
しかし、これができていない人が多い。具体的には、天気予報で「上空に寒気が流れ込む」「大気が不安定」という言葉があれば、雷の発生に警戒すべきだ。
JK
そういう言葉に注意すればいいんですね。
先生
それから、雷は夏場の午後、特に14時以降に多く発生する。だから夏山では午前中に行動を終える計画を立てるのが基本だ。
JK
朝早く出発して、お昼には下山ってことですか?
先生
その通り。「日が暮れるまで時間あるから大丈夫」という考えは、雷のリスクを無視している。

稜線で雷に遭遇した場合

先生
もし稜線上で雷鳴が聞こえたり、稲妻が見えたりした場合は、直ちに行動すべきだ。
JK
どうすればいいんですか?
先生
最優先は稜線からの退避だ。できるだけ低い位置へ移動する。尾根やピークは落雷の危険性が極めて高い。
JK
低いところに逃げればいいと。
先生
それから、姿勢を低くする。両足を揃えてしゃがみ、地面との接触面積を小さくする。低いくぼ地やハイマツなどの低木の中に避難するのも有効だ。

雷対策でよくある誤解

JK
あ、そういえば金属のものを外せって言いますよね?ザックのフレームとか。
先生
実はそれは誤解だ。

参考情報: 「金属製のザックフレームや登山道具、身につけている金属製品が落雷を誘発するという科学的根拠は薄く、無理に外す必要はありません」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQHI5qcVfwPKZX4CPWTAHmrAYhDJWlCMcX2FlyBp1Dt2JhG0mEBxQBfom1cm0ZZIHE7LtdRJtjxptfPl6MjNwXn5LTSFRiAt1yUcozPCYvVcoTis327YexhRTA==

JK
え、そうなんですか!?
先生
金属製品が落雷を誘発するという科学的根拠は薄い。むしろ金属が避雷針の役割を果たし、電流を地面へ逃がす可能性も指摘されている。
JK
じゃあ外さなくていいんですね。
先生
ただし、尖ったトレッキングポールなどは体から離して置いたほうがいい。それから、グループで行動している場合は一箇所に固まらず、5m以上の間隔を空けて分散することで、一度に複数人が被災するリスクを減らせる。
JK
なるほど…覚えることが多いですね。
先生
雷鳴が聞こえなくなってからも、少なくとも30分間は安全な場所で待機すること。これも忘れずに。

避けるべき場所

先生
雷の際に避けるべき場所も覚えておこう。
  • 大きな岩や尖った岩:電流が岩伝いに流れる危険
  • 木の近く:側撃(木に落ちた雷が人に飛び移る)の危険。最低4m以上離れる
  • 開けた場所や水場:落雷の危険性が高い

気象遭難の恐ろしさ

JK
先生、実際に天気が原因で遭難した事故ってあるんですか?
先生
ある。むしろ、登山事故の原因として天候は非常に大きな割合を占めている。ひとつ、忘れられない事故を話そう。

トムラウシ山遭難事故(2009年7月)

先生
2009年7月、北海道大雪山系のトムラウシ山で起きた事故だ。梅雨明け間近の7月、ツアー登山グループが暴風雨に遭遇し、ガイドを含む8名が亡くなった。

参考情報: 「トムラウシ山遭難事故は、気温がそれほど低くなくても、雨による濡れと風による冷却が重なることで低体温症が急速に進行する危険性を示しています」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQEozXYGjxQmGC77VP1FmS4jE98GwV7AXhvQmFQ3uSThd7ca_zX8T1QvaDXc6-6JPObwoy1rbeD8CJ8HS7oPUgpiT69amboTa1dGJpbtKzOzUDt0KahrsRM8qDu3

JK
7月に…?夏じゃないですか。
先生
そこがポイントだ。夏山でも、標高が高い場所では低体温症で命を落とすことがある。
JK
低体温症って、冬の話じゃないんですか?
先生
違う。低体温症は「気温10℃以下」「雨や雪で体が濡れる」「風速10m/s以上」—これらの条件が重なれば、夏でも起きる。
JK
でも、そんなに寒くなければ…
先生
トムラウシの事故では、気温自体はそれほど低くなかった。しかし、雨で体が濡れ、強風で体温を奪われ続けた結果、低体温症が急速に進行した。

朝日岳低体温症事件(2023年10月)

先生
もっと最近の事故もある。2023年10月、新潟県と栃木県の境にある朝日岳で、急激な天候悪化と強風により4人の登山者が亡くなった。

参考情報: 「朝日岳低体温症事件では、急激な天候悪化と強風が原因で4人の登山者が低体温症で亡くなりました」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQH_WghhhwcF9t82hOeJx0k5WkZW_hkx4ZPFe4DG7LKzk0B4f_WjQEaC_iaYDhHbqVFq6BFRCjAMLU6SFiskdkjTmtzt9t8h6WZsIr6FPXNM8zJkus4rQ3Cq6Nbc7QbajVO2USMfG0IVnuw4Uw==

JK
10月…秋ですよね。
先生
救助隊が到着した際、暴風と雨で体感温度は-1℃だったという。携帯電話が通じる場所で救助要請があったにもかかわらず、救助が間に合わなかった。
JK
…怖いですね。
先生
だからこそ、天候判断は命に直結するんだ。「大丈夫だろう」という楽観的な判断が、取り返しのつかない結果を招くことがある。

低体温症を防ぐために

先生
低体温症を防ぐためには、「濡れない」ことが最重要だ。水は空気の約25倍の熱伝導率を持つ。濡れた服は急速に体温を奪う。
JK
だからレインウェアが大事なんですね。
先生
その通り。たとえ晴れ予報でも、レインウェアは必ず持っていく。これは鉄則だ。

Image Prompt: 雨の中の稜線で、レインウェアを着た登山者が風に耐えながら歩く写真。厳しい気象条件が伝わる構図。


「勇気ある撤退」の重要性

JK
先生、正直なこと言っていいですか?
先生
なんだ?
JK
せっかく計画立てて、交通費も払って、早起きして山に来たのに、「天気悪いから帰ります」って、なんかもったいなくないですか?
先生
…その気持ちは、痛いほど分かる。
JK
え、先生も?
先生
私だって何度もそう思ったことがある。「せっかく来たんだから」「もう少し様子を見よう」「他の人は登ってるし」…そういう心理は誰にでもある。
JK
じゃあ、どうやって判断するんですか?
先生
大事なのは、引き返す基準を事前に決めておくことだ。現場で判断しようとすると、「せっかく来たから」という心理に負けてしまう。

参考情報: 「『せっかく来たから』という気持ちよりも、危険を感じたら引き返す『勇気ある撤退』が命を守ります」

出典https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFzvbdAWYlwWhReRWkO1Usvhx3fOWkBygad9aMvMYKG5JWijpQjOVe1BuUDXJqTc0VCxdUjfsQr-etsVwK-zgTsSX1ww_w0aoulFQXpPweNQuEmmXo1nn9hsIh4MGRRZKCTX2aTZR5Ju0MbpyXt2lTW0VG0

JK
事前に決めておく…
先生
例えば「登山口に着いた時点で雨が降っていたら中止」「稜線の風が10m/sを超えていたらピークは諦めて引き返す」「午後2時までに山頂に着けなければ撤退」など、客観的な基準を決めておく。
JK
そうすれば迷わなくて済みますね。
先生
そして、最も大切なこと。山はいつでもそこにある。今日登れなくても、次の機会がある。しかし、命は一つしかない。
JK
…そう言われると、確かにそうですね。
先生
「勇気ある撤退」という言葉がある。悪条件の中で無理に登頂を目指すより、安全に下山して次の機会を待つ方が、よほど勇気のいる判断だ。

まとめ

JK
先生、今日はたくさん教えてもらいましたけど、結局何を覚えておけばいいんですか?
先生
大きく5つだ。
  1. 山の天気は平地と全く違う:標高100mで0.6℃気温が下がり、風速1m/sで体感温度が1℃下がる
  2. 山岳専門の天気予報を複数確認する:てんくら、ヤマテン、Windyなどを併用
  3. 中止基準を事前に決めておく:風速15m/s以上、降水確率60%以上(森林限界超え)、気象警報発令時は中止
  4. 現場で空を観察する習慣をつける:積乱雲や急な風の変化に注意
  5. 撤退の勇気を持つ:山はいつでもそこにある
JK
意外と覚えること多いですね…。でも、命に関わることだからちゃんと覚えます。
先生
その意識が大切だ。天気を読む力は、経験を積むほど身についてくる。最初は分からなくても、何度も空を見上げ、予報と実際の天気を比較し続けることで、少しずつ感覚が磨かれていく。
JK
先生も最初は分からなかったんですか?
先生
もちろんだ。私も何度も天候急変で怖い思いをした。その経験があるからこそ、今は天気に対して謙虚になれる。
JK
天気に謙虚…なんか深いですね。
先生
自然は人間の都合に合わせてくれない。だからこそ、私たちが自然に合わせるしかない。それが安全な登山の基本だ。
JK
分かりました!次の登山からはちゃんと天気予報チェックします。てんくらとヤマテンとWindyと…
先生
ははは、欲張りだな。まずはてんくらから始めて、少しずつ他のサービスも試してみるといい。

天気予報サービス比較表

項目 てんきとくらす ヤマテン Windy
料金 無料 月額550円 無料
対応山数 2,300以上 330山 全世界
特徴 登山指数で視覚的 専門家の詳細予報 風・雲のアニメーション
メリット 手軽、カバー範囲広い 精度が高い、解説付き 直感的に理解できる
デメリット 雷考慮なし、時間帯限定 有料、対応山域限定 日本語情報少ない
おすすめ 初心者、日帰り低山 上級者、難易度高い山行 天気図好きな人

中止基準チェックリスト

登山前に以下の項目をチェックしよう。

  • [ ] 風速15m/s以上の予報が出ていないか
  • [ ] 降水確率60%以上(森林限界超え)ではないか
  • [ ] 気象警報(大雨、暴風、雷など)が発令されていないか
  • [ ] 24時間以内の降水量が50mmを超えていないか
  • [ ] 雷注意報が出ていないか
  • [ ] 「大気が不安定」「寒気が流れ込む」という予報文がないか

ひとつでも該当したら、計画の見直しまたは中止を検討しよう。

先生
最後にひとつ。天候判断に100%の正解はない。だからこそ、常に撤退の選択肢を持ち、状況に応じて柔軟に判断する姿勢が大切だ。
JK
分かりました、先生!次の登山が楽しみになってきました。
先生
いい天気の日に、また一緒に登ろう。