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導入

JK
先生、私もう限界です…。この前の登山、小指が痛すぎて泣きそうでした。お店で「これおしゃれだよ!」って勧められた海外ブランドの靴だったのに…。
先生
ふむ。典型的な「幅広甲高の悲劇」だな。欧米ブランドの靴は、基本的に欧米人の細長い足(長さ10:幅3.5)に合わせて作られている。そこに日本人の幅広の足(長さ10:幅4)を無理やりねじ込めば、当然小指は悲鳴を上げる。
JK
やっぱり私の足が悪いんですか? シンデレラフィットする靴なんて、この世にないんじゃ…。
先生
諦めるのは早い。日本には「シリオ (SIRIO)」がある。「日本人の足専用」に開発された、まさに幅広足の救世主だ。1993年に誕生して以来、日本人の足型を徹底的に研究し続けている国産ブランドだ。
JK
シリオ? なんか聞いたことありますけど、デザインがちょっと…地味じゃないですか?
先生
「痛くない」は正義だ。どんなに可愛い靴でも、足が痛ければただの拷問器具だぞ。今日は、シリオがなぜ「痛くない」のか、その秘密である「3E+(スリーイープラス)」という独自のワイズ設定と、実際の歩きやすさを徹底的に解説する。これを読めば、君の足の悩みも解決するはずだ。

Image Prompt: 登山道のベンチで、痛む足をさすりながら悲しそうな顔をするJKと、自信満々にシリオの靴(P.F.431など)を差し出す先生。背景は新緑の山。


第1章: なぜシリオだけが「痛くない」のか?

先生
まずはシリオ最大の特徴、「3E+」「P.F.コンセプト」について解説しよう。

1. 「3E+」という魔法の数字

JK
3Eなら知ってます。幅広ってことですよね? 他のメーカーにもありますよ?
先生
甘いな。一般的な「3E」は、単にJIS規格などの数値に合わせているだけのことが多い。しかしシリオの「3E+」は違う。「日本人の足の形」そのものを研究し尽くして作られた専用のラスト(木型)なのだ。
JK
何が違うんですか?
先生
「つま先は広く、カカトは狭く」だ。多くの幅広靴は、全体的にボテッと広げてしまうため、カカトまで緩くなってしまう。「幅は楽だけど、歩くとカカトがスポスポ抜ける」という経験はないか?
JK
あります! 靴の中で足が泳ぐ感じで、逆に疲れちゃうんですよね。
先生
シリオはそこを解決している。指先は「グーチョキパー」ができるほど自由なのに、カカトと足首はキュッと絞り込まれていて、吸い付くようにフィットする。この「メリハリ」こそが、シリオが唯一無二である理由だ。
JK
でも、それって本当に実感できるんですか? なんか理屈っぽくて…。
先生
実際に試着すれば一発で分かる。私が初めてシリオを履いたのは、八ヶ岳の赤岳に行く前だった。それまで使っていた海外ブランドの靴は、下りで必ず親指の爪が内出血していたんだが、シリオに変えてから一度もそのトラブルがなくなった。つま先に余裕があるから、急な下りでも爪が靴の先端に当たらないんだ。

2. 欧米人とは違う「10:4」の比率

先生
統計によると、日本人の足は「足長10に対して足幅4」という比率が多い。対して欧米人は「10:3.5」だ。
JK
たった0.5の違いですか?
先生
靴の世界で0.5の違いは決定的だ。このズレが、小指の激痛やマメの原因になる。シリオはこの「10:4」を基準に設計されているから、履いた瞬間に「あ、これ私のための靴だ」という感覚になるんだ。
JK
じゃあ、私みたいに「足が幅広すぎて合う靴がない」って人は、みんなシリオ履けばいいってことですか?
先生
その通り。実際、登山用品店で「幅広の足で困っている」と相談すると、まず勧められるのがシリオだ。それだけ信頼されているブランドなんだ。

3. P.F.コンセプト(プリウス・フォルマ・コンセプト)

先生
シリオには「P.F.コンセプト」という独自の設計思想がある。これは「幅(Fit)」「高さ(Height)」「硬さ(Flex)」の3要素にこだわるというものだ。
JK
あー、なんかまたプロ的な話来たー。
先生
簡単に言うと、「足のどの部分を、どれくらいの高さで、どれくらいの硬さでサポートするか」を徹底的に計算しているということだ。
  1. 幅(Fit): つま先部分はゆったり、かかと部分はしっかりホールド
  2. 高さ(Height): かかととつま先の高さの差を10mmに設定し、自然な歩行姿勢を保つ
  3. 硬さ(Flex): 足裏の力のバランスに合わせて靴の硬さを最適配分
JK
10mmの差って、そんなに重要なんですか?
先生
重要だ。高さの差が大きすぎると、つま先が下がりすぎて爪が痛くなる。逆に差が小さすぎると、かかとが安定せず疲れやすくなる。シリオは日本人の歩行データを分析して、この10mmという数値を導き出したんだ。

Image Prompt: 日本人の足型(幅広)と欧米人の足型(細長)の比較図。シリオの靴が日本人の足型にぴったり重なっている様子を分かりやすく図解。


第2章: 目的別! 失敗しないシリオの選び方

JK
シリオが凄いのは分かりましたけど、種類がいっぱいあってどれを選べばいいか分かりません。
先生
用途に合わせて選ぶのが鉄則だ。代表的な4つのモデルを紹介しよう。

1. 初心者・ハイキングなら「P.F.302」

先生
まずは入門モデルの「P.F.302」だ。
  • 特徴: 軽量で柔らかい。価格も手頃。重さは約580g(26.0cm片足)。
  • 向いている人: 低山ハイク、富士登山、キャンプ。
  • ソール: シリオ・ビブラム KOIソール(整備された登山道での歩行性・クッション性重視)
JK
軽そう! これならスニーカー感覚で履けそうですね。
先生
うむ。足首の周りも柔らかいパッドで覆われているから、初めて登山靴を履く人でも違和感が少ない。「マルチダイレクション・アンクルフレックス・システム」という足首サポート機能も搭載されていて、足首の動きやすさと安定性を両立している。
JK
でも、柔らかいってことは、岩場とかは苦手?
先生
そうだ。ソールが比較的柔らかいから、北アルプスのような険しい岩稜帯では、足裏に突き上げを感じて疲れるかもしれない。あくまで「歩きやすい道」を快適に歩くための靴だ。
JK
実際に使った人の評判はどうなんですか?
先生
「軽快で履き心地が良い」「外反母趾の傾向がある足にもフィット」「長時間歩いても快適」という声が多い。ただし、「耐久性が低い」「ソールの摩耗が早い」という意見もある。入門モデルだから、本格的な縦走には向かないということだな。
JK
じゃあ、私みたいに「とりあえず登山を始めてみたい」って人にはピッタリですね。
先生
そうだ。ただし、一つ注意点がある。旧モデルの一部(特に中国製)では、使用後半年から1年で靴が縮んだように変形したという報告がある。現在はベトナム製に移行しているが、購入時は製造国を確認した方がいい。

2. 日帰り〜小屋泊の万能選手「P.F.431」

先生
次は、最もバランスの良いベストセラー「P.F.431」だ。
  • 特徴: ナイロンとレザーのコンビ素材。適度な剛性と軽さのバランスが絶妙。重さは約530g(女性用)。
  • 向いている人: 日帰り登山から、ステップアップして小屋泊まりに挑戦したい人。
  • ソール: ビブラム CAMOSCIOソール(様々な路面に対応するオールラウンドタイプ)
JK
ちょっと本格的な雰囲気になってきましたね。デザインもシュッとしててカッコよ。
先生
これは「迷ったらこれ」と言える一足だ。ソールもしっかりしていて、多少の岩場なら問題なくこなせる。防水透湿素材のゴアテックスも当然搭載しているから、雨の日でも安心だ。
JK
3E+の広さはどうですか?
先生
完璧だ。指先はフリーでストレスフリー。それでいて、紐を締め上げれば足首がガッチリ固定される。下りで足が前にズレて爪が死ぬ、なんてトラブルも激減するはずだ。
JK
実際に使った人は何て言ってるんですか?
先生
「幅広の足でも小指や親指の締め付け感が少ない」「適度な靴底の硬さで疲れにくい」という評価が高い。ただし、「靴の中で足が若干動き、かかとに靴擦れができた」というユーザーもいる。これは紐の締め方やインソールの調整で改善できることが多いがな。
JK
平地を歩くときはどうですか? 登山口まで車で行くとき、駐車場から歩くじゃないですか。
先生
「自宅から登山口までの平地では靴底が硬いと感じる」という声もある。ただ、登山開始後は快適に使えるという意見が大半だ。登山靴は山で使うためのものだから、平地での快適性は二の次と考えた方がいい。
JK
なるほど。じゃあ、私が次に買うならこれかな。
先生
良い選択だ。それに、P.F.431はソール張替えが可能だから、長く使える。アッパーが足に馴染んだ頃にソールを張り替えれば、また新品同様のグリップ力が戻る。

Image Prompt: シリオ P.F.431を履いて、木漏れ日の差す林道を軽快に歩く女性。足元のアップ。

3. テント泊・縦走なら「P.F.46-3 / 46-4」

先生
最後は、よりハードな山行向けの「P.F.46シリーズ」だ。
  • 特徴: 堅牢な作り。重い荷物を背負っても負けない安定感。重さは約600g(26.0cm片足)。
  • 向いている人: テント泊縦走、中級山岳域(無雪期3,000m以下、積雪期2,000m以下)、岩場・不整地、アルプス全般。
  • ソール: シリオ・ビブラム OKAMIソールまたはVibram MEGAGRIP(岩場・不整地でのグリップ力)
JK
強そう…。なんかゴツイですね。
先生
この「ゴツさ」が命を守るんだ。重いザックを背負うと、柔らかい靴では足首がグネりやすくなる。この靴はソールも硬く、アッパーもしっかりしているから、不安定な岩場でも安定して歩けるぞ。
JK
でも、重くないですか?
先生
確かにスニーカーに比べれば重いが、「重い靴は振り子の原理で足が出やすい」という側面もある。それに、足にフィットしていれば、実際の重さよりも軽く感じるものだ。
JK
P.F.46-3と46-4って何が違うんですか?
先生
P.F.46-4は2024年に発売された改良版だ。主な違いは以下の通り。
  • アッパー素材: P.F.46-3はヌバックレザー、P.F.46-4はアラミド繊維(ケブラー)
  • シューレース: P.F.46-4はつま先近くまでシューレースがあり、細かなフィット調整が可能
  • 足首のホールド: P.F.46-4は柔らかめのハイカットで、足首の安定感と動きやすさを両立
JK
ケブラーって、なんか聞いたことあるような…?
先生
防弾チョッキなどに使われるやつだな。強度と柔軟性に優れた素材だ。岩場で擦れても破れにくく、長く使える。
JK
実際に使った人の評判は?
先生
「甲高幅広の日本人の足にぴったり」「必要な機能をすべて備えたパーフェクトなシューズ」という声が多い。ただし、「ソールが硬めのため、平地での歩行では足に負担を感じる」「紐が緩みやすい」という指摘もある。
JK
紐が緩みやすいって、危なくないですか?
先生
こまめに締め直せば問題ない。それに、P.F.46-4には足首のホールド力を高めるロック機能付きフックが搭載されているから、紐の緩みを防げる。

4. さらに幅広! 「4E+」が必要な人とは?

JK
先生、私、3E+でもまだキツイ気がするんですけど…。
先生
なんと。もしそうなら、君は選ばれし「4E+」の適合者かもしれない。
JK
4E+!? もはや座布団みたいな広さですか?
先生
座布団はあんまりだが…確かに広い。シリオには、3E+よりもさらに幅広な「4E+」というワイズ設定がある。モデルで言うと「P.F.640」などが対応している。これは以下のような人向けだ。
  1. 重度の外反母趾: 親指の付け根が完全に出っ張っていて、何かに触れるだけで激痛が走る人。
  2. 極度の甲高: 足の甲が盛り上がりすぎて、普通の靴だと紐が結べない人。
  3. むくみ体質: 行動中に足がパンパンにむくんで、夕方になると靴のサイズが変わってしまう人。
JK
私、夕方になると足がゾウさんみたいになるんです…。4E+の方がいいのかな?
先生
試着してみる価値はある。ただし、「広ければいい」というわけではないから注意が必要だ。
JK
え、どういうことですか?
先生
必要以上に広い靴は、靴の中で足が動いてしまい、マメや靴擦れの原因になる。さらに、岩場で細かい足場に乗るときに、靴の中で足がズレて踏ん張りが効かない。「ジャストフィットする最小のサイズ」を選ぶのが登山の基本だ。安易に4E+に逃げず、まずは3E+をしっかり紐で締めて試してみることを勧める。
JK
じゃあ、4E+はどういう人が買うべきなんですか?
先生
「従来の登山靴では足が窮屈だったユーザーが、P.F.640を履いた瞬間にフィット感を実感し、即購入を決めた」という事例がある。つまり、3E+でも明らかにキツイと感じる人だけが選ぶべきだ。

第3章: シリオの弱点とリアルな注意点

JK
良いことばっかり言ってますけど、ダメなところはないんですか? 先生の「忖度なしレビュー」が聞きたいです。
先生
ふむ、鋭いな。もちろん弱点もある。

1. デザインが「渋い」

JK
やっぱり! 正直、地味ですよね…。
先生
質実剛健と言ってくれ。確かに、流行りのウルトラライト系ブランドのような派手なカラーリングや、近未来的なデザインはない。「山男の道具」という雰囲気が強いな。
JK
ウェアが可愛くても、足元だけガチ登山部みたいになっちゃうのが悩みどころかも。
先生
だが、山で一番ダサいのは「足が痛くて歩けなくなっている姿」だぞ。機能美として愛でるんだ。
JK
それはそうですけど…。もうちょっとカラーバリエーションがあればいいのに。
先生
カラーバリエーションが少ないのは確かに弱点だ。他の人と区別がつきにくいという声もある。ただ、シリオは「見た目」ではなく「機能」で勝負しているブランドだから、そこは割り切るしかない。

2. ソールの減りが早い?

先生
一部のユーザーからは「ソールの減りが早い」という声も聞く。
JK
えー、コスパ悪いんですか?
先生
これはグリップ力とのトレードオフだ。シリオのソールは、日本の濡れた岩や木の根でも滑りにくいように、粘り気のあるコンパウンドを使っている場合がある。「滑りにくい=柔らかい=減りやすい」というのは、ある程度仕方がない物理法則だ。
JK
命を守るためなら、多少の減りは我慢しろってことですね。
先生
そういうことだ。それに、多くのモデルはソール交換(リソール)が可能だ。アッパーが足に馴染んで最高の状態になった頃にソールを張り替えれば、また新品同様のグリップ力が戻る。長く付き合えるぞ。
JK
ソール交換っていくらくらいかかるんですか?
先生
シリオの公式アフターサービスなら、10,000円~20,000円程度が目安だ。シリオ純正ソールへの交換で14,000円(税抜)という例もある。専門の靴修理店に依頼すれば、代替ソールを使用してもう少し安く済む場合もある。
JK
1万円以上かかるんですね…。
先生
新しい靴を買うよりは安い。それに、足に馴染んだ靴をまた使えるというのは、何物にも代えがたい価値がある。

3. かかと部分のズレや靴擦れ(一部モデル)

先生
一部の古いモデルでは、急な坂を登る際に踵がずれ、靴擦れを起こすことがあったという報告がある。
JK
え、それって致命的じゃないですか?
先生
新しいモデル(P.F.46-4など)では改良されているから、現行モデルを選べば問題ない。それに、踵のズレは紐の締め方やインソールの調整で改善できることが多い。
JK
紐の締め方って、そんなに重要なんですか?
先生
非常に重要だ。登山靴は、紐をしっかり締めることで初めて本来の性能を発揮する。特に下りでは、紐を緩めると足が前にズレて爪が痛くなる。逆に、上りでは紐を少し緩めると足首が動きやすくなる。状況に応じて紐の締め方を調整するのが、登山靴を使いこなすコツだ。

4. ソールの硬さ(モデルによる)

JK
さっき「ソールが硬い」って言ってましたけど、それって良いことなんですか?
先生
用途による。岩場や不整地では、ソールが硬い方が足裏への突き上げが少なく、疲れにくい。ただし、整備された登山道や平地では、ソールが硬すぎると足が疲れる。
JK
じゃあ、どうすればいいんですか?
先生
自分の登山スタイルに合ったモデルを選ぶことだ。軽登山やハイキングならP.F.302、日帰り登山から小屋泊ならP.F.431、テント泊縦走や岩場ならP.F.46シリーズという具合にな。

第4章: ビブラムソールの秘密

JK
さっきから「ビブラムソール」って何度も出てきますけど、それって何がすごいんですか?
先生
ビブラムは、イタリアの老舗ソールメーカーだ。登山靴のソールと言えばビブラム、と言われるほど信頼されている。

1. シリオ×ビブラム共同開発ソール

先生
シリオはビブラム社と共同で独自のソールを開発している。代表的なソールは以下の通りだ。
  • シリオ・VIBRAM KOI: 整備された登山道での歩行性・クッション性重視(P.F.302に採用)
  • VIBRAM CAMOSCIO: 様々な路面に対応するオールラウンドタイプ(P.F.431に採用)
  • シリオ・VIBRAM ŌKAMI: 岩場・不整地でのグリップ力、泥はけの良さ(P.F.46シリーズに採用)
  • Vibram MEGAGRIP: 濡れた路面や不整地でも高いグリップ力
JK
それぞれ何が違うんですか?
先生
ラバーの配合、ブロックパターン、硬さが違う。例えば、OKAMIソールは岩場でのグリップ力を重視しているから、角度をつけたブロックパターンと広い接地面積を持っている。さらに、セルフクリーニング設計で泥が詰まりにくく、常に高いグリップ性能を維持する。
JK
セルフクリーニング設計って何ですか?
先生
歩くたびに泥が自然に落ちる設計のことだ。ソールの溝が深く、泥が詰まりにくい形状になっている。これがないと、泥が詰まってグリップ力が落ちてしまう。

2. グリップ力の実力

JK
実際、どれくらい滑りにくいんですか?
先生
私が去年の秋、北アルプスの涸沢に行ったときのことだ。雨上がりで岩が濡れていて、他の登山者が滑って転んでいる中、シリオのP.F.46-3を履いていた私は全く滑らなかった。OKAMIソールのグリップ力は本物だ。
JK
すごい! でも、それってソールが減りやすいってことですよね?
先生
その通り。グリップ力が高いソールは、柔らかいラバーを使っているから減りやすい。ただ、命を守るためなら、多少の減りは我慢できるだろう。

第5章: サイズ選びと試着の極意

JK
シリオが良いのは分かりましたけど、サイズ選びが難しそう…。
先生
登山靴のサイズ選びは、安全で快適な登山のために非常に重要だ。以下のポイントを押さえれば、失敗しない。

1. 「捨て寸」の確保

先生
登山靴では、「捨て寸」と呼ばれるつま先の余裕が必要だ。最も長い指の先端から靴の先端まで1cm程度の隙間が目安だ。
JK
1cmも余裕があったら、ブカブカじゃないですか?
先生
下り坂では、足が前にズレてつま先が靴の先端に当たる。この「捨て寸」がないと、爪が内出血したり、剥がれたりする。シリオのブーツは、製造時に約1.3cmの捨て寸を考慮しているから、ゲージ表示と同じサイズから試着を始めることが推奨されている。
JK
じゃあ、普段のスニーカーより大きいサイズを選ぶってことですか?
先生
いや、シリオは既に捨て寸を考慮して作られているから、普段のサイズと同じで大丈夫だ。ただし、必ず試着して確認することが重要だ。

2. 登山用の厚手ソックスを持参する

先生
試着するときは、実際に山で履く予定の厚手の登山用ソックスを履くことが必須だ。
JK
普通の靴下じゃダメなんですか?
先生
通常の靴下ではフィット感が大きく異なる。登山用ソックスは厚手だから、それを履いた状態で試着しないと、正確なサイズ感がつかめない。

3. 午後の時間帯に試着する

先生
足は一日の活動でむくみ、午後になると朝よりも0.5~1.0cm程度大きくなる。
JK
え、そんなに変わるんですか?
先生
登山中の足の状態に近い午後に試着することで、より適切なサイズを選べる。朝に試着して「ピッタリ」と思っても、午後には「キツイ」と感じることがあるんだ。

4. 店内で歩き回る

先生
椅子に座ったままではなく、店内で実際に歩いて履き心地を確認しよう。可能であれば、傾斜台を歩かせてもらい、上り下りでのフィット感やつま先の当たり具合、かかとの浮きを確認することが重要だ。
JK
どれくらい試し履きすればいいんですか?
先生
最低でも20~30分は試し履きをすることをおすすめする。その間に、以下のチェックポイントを確認しよう。
  • つま先の余裕: つま先が靴の先端に当たらないか
  • かかとのホールド感: 紐をしっかり締めた状態で、かかとがパカパカと大きく浮かないか
  • 足の甲や側面の圧迫感: 足の甲や側面が締め付けられすぎたり、不快な圧迫感がないか
  • 足首のホールド感: ハイカットやミドルカットの場合、足首がしっかりホールドされているか、かつ動きを妨げないか
JK
そんなに時間かけて試着していいんですか? 店員さんに迷惑じゃないですか?
先生
登山専門店の店員は、むしろ時間をかけて試着してほしいと思っている。サイズの合わない靴を買って、山で怪我をする方が問題だからな。

5. インターネット通販での購入は避ける

JK
でも、ネットで買った方が安いですよね?
先生
登山靴の履き心地はモデルやメーカーによって大きく異なる。実際に試着せずにインターネットで購入するのは避けるべきだ。サイズの合わない登山靴は、靴擦れ、マメ、爪の剥がれ、捻挫など、様々な怪我の原因となる。
JK
でも、返品できるお店もありますよね?
先生
返品できても、また試着して選び直す手間がかかる。最初から専門店で試着して買う方が、結果的に時間もお金も節約できる。

6. 履き慣らし期間

先生
購入後すぐに本格的な登山に使用するのではなく、自宅周辺や近場の低山などで事前に履き慣らしを行い、足に馴染ませることが大切だ。
JK
どれくらい履き慣らせばいいんですか?
先生
最低でも10km程度は歩いておきたい。これにより、痛みや靴擦れのリスクを減らせる。

第6章: まとめ・比較表

JK
結局、私はどれを選べばいいんでしょう?
先生
君の場合、まずは「P.F.431」を試着してみろ。3E+の快適さと、適度なホールド感のバランスが最高だ。もしそれでもキツければ、4E+のモデルを検討すればいい。
JK
わかりました! 「痛くない」ってだけで、次の登山が楽しみになってきました!
先生
最後に比較表をまとめておこう。
モデル名 ワイズ 重さ(片足) ソール 特徴 おすすめユーザー
P.F.302 3E+ 約580g/26.0cm シリオ・ビブラム KOI 軽量・ソフト・高コスパ・クッション性重視 ハイキング、富士登山、初心者
P.F.431 3E+ 約530g(女性用) ビブラム CAMOSCIO バランス型・軽量・防水・ソール張替え可能 日帰り〜小屋泊、最初の1足に最適
P.F.46-3 3E+ 約600g/26.0cm シリオ・ビブラム ŌKAMI 堅牢・安定感・ホールド重視・ヌバックレザー テント泊縦走、アルプス全般
P.F.46-4 3E+ 約600g/26.0cm Vibram MEGAGRIP 堅牢・安定感・ケブラー素材・細かなフィット調整可能 テント泊縦走、アルプス全般、岩場
P.F.640 3E+/4E+ - シリオ・VIBRAM ŌKAMI 重登山靴・ヌバックレザー・4E+対応 長期縦走、岩場、幅広足の最終兵器
先生
最後に一つ。必ずお店で試着すること。そして、登山用の厚手の靴下を持参すること。これをサボると、どんな名靴も台無しだぞ。
JK
はい! 今週末、早速お店に行ってきます! さよなら激痛の日々!
先生
それと、もう一つ重要なことを言い忘れていた。
JK
え、まだあるんですか?
先生
シリオは「日本企画、イタリア設計」というこだわりを持って作られている。日本で企画・開発された靴は、靴作りの伝統と技術が受け継がれるイタリアで設計され、主にイタリアとベトナムで生産されている。つまり、日本のニーズとイタリアの靴作りの技術が融合した製品なんだ。
JK
へー、イタリア製なんですね。なんかちょっとおしゃれに聞こえてきました。
先生
イタリアは革のなめし技術や染色技術、ホックや靴紐などの製造技術が発達している。これらの技術がシリオの靴作りに活かされているんだ。一部のモデルには「MADE IN ITALY」の表記も見られる。
JK
じゃあ、機能だけじゃなくて、品質も高いってことですね。
先生
その通り。シリオは1993年に誕生して以来、日本人の足型を徹底的に研究し続けている。30年以上の歴史と実績があるブランドだから、信頼できる。
JK
分かりました! もう迷いません。シリオ一択です!
先生
ふふ、良い決断だ。ただし、一つだけ注意点がある。
JK
まだあるんですか…?
先生
登山靴の寿命は、製造から3年~5年が目安だ。久しく履いていない靴は、歩行中にソールが剥がれる危険性がある。山行前にソールの状態を確認しよう。アウトソールの溝が浅くなっている、ミッドソールがボロボロで隙間がある状態は滑りやすく危険だ。
JK
じゃあ、定期的にメンテナンスが必要ってことですね。
先生
そうだ。ソールの状態を確認し、必要に応じてソール交換を検討する。シリオの公式アフターサービスなら、熟練した専門スタッフがソールの張替えを行ってくれる。費用は10,000円~20,000円程度が目安だが、新しい靴を買うよりは安い。
JK
分かりました。大切に使います!

免責事項

※本記事の情報は執筆時点のものです。メーカーの仕様変更などにより、製品名やスペックが変わる場合があります。購入の際は公式サイトや店頭で最新情報をご確認ください。