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Image Prompt: アメリカのロングトレイル(PCTなど)を歩くハイカー。背中にはPa'lanteのV2。歩きながら、リュックの「底」にあるポケットから行動食を取り出している。夕日に照らされた山々と広大なトレイルが背景。
導入:リュックの「底」に穴がある?
先生、このリュック、底になんか穴が開いてますよ?不良品ですか?
違う違う。それは「ボトムポケット」だ。今、世界のUL(ウルトラライト)ハイカーがこぞって愛用しているブランド、「Pa'lante Packs (パランテ)」の最大の発明だ。
スペイン語で「前へ」という意味だ。正確には"para adelante"(パラ・アデランテ)を短縮した言葉で、「立ち止まらずに歩き続ける」ための工夫が詰まっているんだ。
Pa'lanteの誕生:CDTで出会った2人のハイカー
2016年にAndy Bentz(アンディ・ベンツ)とJohn Zahorian(ジョン・ザホリアン)という2人のハイカーが立ち上げた、比較的新しいブランドだ。
2人はContinental Divide Trail(CDT)で出会った友人で、「シンプルで、ウルトラライトで、クリーンなパック」を作りたいという思いから、最初はたった40個のパックを作って、InstagramやYouTube、Redditの"r/Ultralight"で販売を始めたんだ。
40個から始めたんですか!今じゃ世界中で人気なのに。
そう。6ヶ月以内に需要が爆発して、外注製造が必要になった。今はユタ州オグデンで製造されている。ちなみにJohn Zahorianは三冠達成者(PCT、CDT、AT全てを完歩)で、さらにArizona TrailやColorado Trail、Great Divide Trailも歩破している筋金入りのスルーハイカーだ。
すごい!本当にロングトレイルを歩いてる人が作ったパックなんですね。
なぜ「底ポケット」が革命的なのか?
歩きながら食べられる
普通、リュックから行動食を出すときは、一度リュックを下ろすか、仲間に取ってもらうだろう?
はい。面倒くさいから、つい食べるのを我慢しちゃって、後でバテたりします。
Pa'lanteのボトムポケットは、リュックを背負ったまま手が届く位置にある。ここに行動食を入れておけば、歩きながらサッと取り出して食べられるんだ。
えー!カンガルーの袋みたい!それなら私でもバテずに歩けそう!
休憩時間を短縮できる
立ち止まる回数が減れば、それだけ目的地に早く着ける。ロングトレイルを何ヶ月も歩くハイカーにとって、この「小さな時短」の積み重ねが大きな差になるんだ。実際、PCTを歩いたハイカーの中には「最終週にPa'lante V2に切り替えた。ボトムスナックポケットのおかげで歩きながら食べられるから」という人もいる。
確かに!1日10時間歩くとして、それが何ヶ月も続くなら、毎回リュックを下ろす時間がもったいないですね。
ゴミ入れにも便利
食べたゴミをサッと底にしまえるのも便利だ。ポケットティッシュや地図など、頻繁に出し入れするものを入れておくハイカーも多い。
Pa'lanteのデザイン哲学:ヒップベルトが要らないパック
Pa'lanteの目標は「ヒップベルトが不要なほど軽量なパック」を作ることだ。そのために、徹底的に軽量化と機能性を追求している。
ヒップベルトって、あの腰で支えるベルトですよね?それが要らないってことは…
そう、パック自体が超軽量だから、肩だけで十分支えられるんだ。V2には一応ヒップベルトが付いているが、収納可能で、使わないハイカーも多い。
すごい発想…!軽ければベルトすら要らないんですね。
おすすめモデル3選:スタイルで選ぶ
1. 完成されたスタンダード「V2」
Image Prompt: 森の中を歩くハイカー。Pa'lante V2を背負っている。シンプルで無駄のないデザイン。ショルダーハーネスにもポケットがついている。朝の柔らかい光が差し込む。
基本スペック
| 項目 | 詳細 |
| :--- | :--- |
| 容量 | 31L(16"トルソ)/ 37L(19"トルソ) |
| 重量 | Gridstop: 500g / 527g
Ultraweave: 513g / 530g |
| 価格 | $240〜$330(約3.6万〜5万円) |
| 素材 | 210D UHMWPE Gridstop / Ultraweave 200x |
| 適正荷重 | 約11kg以下 |
Pa'lanteの代表作が「V2」だ。約31L〜37Lで、重量はわずか500g前後。ボトムポケットはもちろん、ショルダーハーネスにもポケットがあり、スマホやボトルが入る。
500gって、ペットボトル1本分!軽すぎませんか?
そう、これがUHMWPE(ダイニーマ)Gridstopという超高強度素材のおかげだ。軽いのに引き裂きに強く、スルーハイキングの過酷さにも耐える。
格子状に強化繊維を織り込んだ生地で、軽量性と耐久性を両立している。もう一つの選択肢がUltraweaveで、こちらはヨット帆布メーカーのChallenge Sailcloth製。Gridstopより少し重いが、さらに耐久性と防水性が高い。
特徴的なポケット配置
V2の特徴は、歩きながらアクセスできるポケット配置だ。
- ボトムポケット: 行動食、ゴミ、頻繁に使うもの
- ショルダーストラップポケット(高さ6.5インチ): スマホ、カメラ、スナック
- 大型サイドポケット: 1Lボトル2本まで収納、歩きながら取り出せる
- テントステークポケット: フロントメッシュポケットに統合
対象ユーザー
フレームレス(背中の板がない)だから、パッキングにはコツがいる。ベースウェイト12ポンド(約5.4kg)以下の経験豊富なULハイカー向けだ。Backpacking Lightからは「Highly Recommended(強く推奨)」の評価を受けている。
パッキングさえしっかり行えば、体の一部のようにフィットするぞ。寝袋やテントを下に詰めて「背骨」を作り、その周りに他のギアを配置するのがコツだ。
2. 大容量でタフ「Desert Pack (デザートパック)」
Image Prompt: 砂漠地帯や岩場を歩くハイカー。少し大きめのPa'lante Desert Packを背負っている。生地が厚手で丈夫そう。水筒が複数サイドポケットに入っている。
基本スペック
| 項目 | 詳細 |
| :--- | :--- |
| 容量 | 43L |
| 重量 | Gridstop: 533g / 544g
Ultraweave: 592g / 612g |
| 素材 | 210D UHMWPE Gridstop / Ultraweave 400x |
| トルソサイズ | 16-17"と19"の2サイズ |
水をたくさん運ぶ必要がある場所や、荷物が多い人のために作られたのが「Desert Pack」だ。V2より容量が大きく(約43L)、生地も丈夫だ。Ultraweave版は400xという、V2の200xより厚手の生地を使っている。
デザートって…砂漠?日本のどこで使うんですか?鳥取砂丘?
PCTのようなトレイルには、水場がほとんどない砂漠地帯があって、1回に4〜6リットルの水を運ぶこともある。そういう場所で重宝するんだ。日本なら、水場が少ない縦走路や、食料をたくさん担ぐ長期縦走に向いているな。
そう。だからDesert Packは容量も耐久性もV2より高めに設定されている。実際、PCTを歩いたハイカーの中には「37L V2ではなく43L Desert Packにすればよかった。4ヶ月のハイクでもっと柔軟性が欲しかった」という人もいる。
ULバックパックへの入門に最適
GearJunkieのレビューでは、Desert Packは「ULバックパックへの優れたエントリーポイント」と評価されている。V2より少し余裕があるから、UL初心者でも扱いやすいんだ。
3. 走れるベスト型「Joey (ジョーイ)」
Image Prompt: トレイルを軽快に走るランナー。Pa'lante Joeyを背負っている。ベスト型のハーネスが体に密着している。非常にコンパクト。躍動感のある構図。
基本スペック
| 項目 | 詳細 |
| :--- | :--- |
| 容量 | 24L |
| 重量 | Gridstop: 405g
Ultraweave: 408g |
| 素材 | 210D UHMWPE Gridstop / Ultraweave 200x
70D ナイロンリップストップ |
| サイズ | 18"トルソのワンサイズ |
よりファストハイクやランニングに特化したのが「Joey」だ。ベスト型のハーネスで、揺れを極限まで抑えている。
これ、見た目が一番カッコイイかも!なんか未来っぽい!
容量は少なめ(約24L)だが、ボトムポケットは健在だ。FKT(Fastest Known Time = 最速記録)を狙うハイカーや、トレイルランナーに人気だ。日帰りから、極限まで切り詰めたオーバーナイトハイクまで使える。
その通り!例えば「John Muir Trailを3日で走破」みたいな挑戦だ。Joeyはわずか405gで、ランニングベストのように体にフィットする。
他のULブランドとの比較
Pa'lante以外にも、ULバックパックってたくさんありますよね?何が違うんですか?
良い質問だ。主な競合はHyperlite Mountain GearとGossamer Gearだな。
vs Hyperlite Mountain Gear
| 項目 |
Pa'lante V2 |
Hyperlite Unbound 40 |
| 防水性 |
最小限(パックライナー必須) |
優れた防水性(DCH素材) |
| 重量 |
500g〜 |
約680g |
| 優先事項 |
快適性と軽量性 |
防水性と耐久性 |
| 構造品質 |
高品質 |
トップクラス |
HyperliteはDyneema Composite Hybrid (DCH)という、コーティングに頼らない本質的に防水性の高い素材を使っている。経年劣化しにくいのが強みだ。一方、Pa'lanteは快適な生地と最大限の軽量化を優先している。
じゃあ雨が多い場所ならHyperlite、軽さ重視ならPa'lanteですね。
vs Gossamer Gear
| 項目 |
Pa'lante V2 |
Gossamer Gear Mariposa 60 |
| 容量 |
31L / 37L |
60L |
| 重量 |
500g〜 |
約794g |
| 価格 |
$240〜 |
$200〜(Fast Kumoは安価) |
| ストラップ |
パッド入り |
ランニングベスト型(Kumo) |
Gossamer GearのFast Kumoは、Pa'lante V2と似たコンセプトだが、ランニングベスト型のストラップと2つのスターナムストラップが特徴だ。そして価格がV2より大幅に安い。
安いならGossamer Gearでいいじゃないですか!
コストパフォーマンスは確かにGossamer Gearが良い。ただ、Pa'lanteは「ボトムポケット」や「ショルダーストラップポケット」といった業界標準となった機能を最初に導入した革新者なんだ。デザインの洗練度や、スルーハイカーコミュニティでのブランドステータスは一味違う。
歴史的な位置づけ
- Gossamer Gear: ULパックにフレームを追加した先駆者
- Hyperlite Mountain Gear: アイスクライミングやパックラフティングなど幅広いアウトドア活動向けの軽量ギアを展開
- Pa'lante: 長く、速く歩くという特定のハイキングスタイルに焦点を当てた
耐久性とメンテナンス
良い質問だ。ミニマリストのフレームレスパックとしては「驚くほど耐久性が高い」と評価されている。
耐久性のポイント
- 補強ステッチとバータック: ストレスがかかる部分に補強
- 高品質ハードウェア: アルミG-hookなど、信頼性の高い部品
- UHMWPE素材: 引き裂き強度が高く、スルーハイキングの過酷さに耐える
ただし、Ultraweave素材の外側ポケットは早期に摩耗の兆候を示すことがあるという報告もある。清掃も難しいそうだ。
防水性
Gridstop版はわずかに防水性がある程度で、完全防水ではない。Ultraweave版はより防水性が高いが、激しい豪雨では浸水する可能性がある。だからパックライナー(防水袋)は必須だ。
ULハイカーの間では、大きめの防水ゴミ袋を使うのが定番だ。軽くて安くて効果的だからな。
入手方法:争奪戦を勝ち抜け!
これが難関だ。Pa'lanteは常に品薄状態で、「見つけたら即決」が鉄則だ。
日本での購入
公式日本サイト
- palantepacks.jp - 22,000円以上で全国送料無料
- 運営: Nomadics(日本正規代理店、Moonlight Gearを運営)
実店舗: Moonlight Gear
- 東京(千代田区)
- 大阪(北区)
- 福岡(福岡市)
- 注意: Pa'lante製品は店頭のみ販売。オンライン購入はpalantepacks.jpへ
SNSで情報収集
- Instagram: @palantepacksjapan - 入荷情報をチェック
米国での購入
公式サイト・正規取扱店
- palantepacks.com(公式)
- Garage Grown Gear
- Windthrow
- Nothingblue
- Outsiders Store UK
中古市場
- eBay
- Geartrade
- Backpacking Lightフォーラム
- メルカリ(日本)
再入荷の具体的なスケジュールは公開されていないから、メール通知登録をして、入荷したらすぐ購入するのがおすすめだ。
うう…また争奪戦ですか。でも、歩きながらチョコ食べるために頑張ります!
実際のスルーハイカーの声
PCTやCDTを歩いたハイカーからの評価は非常に高い。いくつか紹介しよう。
PCTハイカーのレビュー
「PCTの最終週にPa'lante V2 Gridstopに切り替えた。ボトムスナックポケットのおかげで、ハイキング中に食べやすくなった。V2は総重量約25ポンド(11kg)まで快適だった。」
「37L V2ではなく43L Desert Packを選べばよかった。4ヶ月のハイクでもっと柔軟性が欲しかった。」
Pa'lanteパックは2016年から使用されていて、思慮深いデザインとV字型構造が評価されている。PCT Daysでは、LiteAFと並んで人気の小型ULパックの一つだ。
コミュニティでの評価
Pa'lanteはベースウェイト12ポンド(約5.4kg)以下の経験豊富なULスルーハイカー向けの「トップクラスのフレームレスパック」と認識されている。ULコミュニティでは一種のステータスシンボルでもあるんだ。
まとめ:モデル別比較表
| モデル名 |
容量 |
重量 |
価格 |
特徴 |
おすすめユーザー |
| V2 |
31L / 37L |
500g〜530g |
$240〜$330 |
ボトムポケットの元祖 豊富なポケット配置 |
ULハイカーの標準装備 スルーハイク |
| Desert Pack |
43L |
533g〜612g |
V2と同等〜 |
大容量、高耐久 Ultraweave 400x |
荷物が多い人、長期縦走 UL初心者の入門 |
| Joey |
24L |
405g〜408g |
詳細不明 |
ベスト型、揺れない 超軽量 |
ファストハイク、トレラン FKT挑戦者 |
Pa'lanteが向いている人・向いていない人
向いている人
- ベースウェイト12ポンド(5.4kg)以下のULハイカー
- パッキングスキルのある経験者
- 長距離・高速ハイキングを目指す人
- FKTやファストパッキングに挑戦する人
- 「立ち止まらずに歩き続ける」スタイルが好きな人
向いていない人
- UL初心者(まずはフレーム付きパックで経験を積むことを推奨)
- ベースウェイトが12ポンド以上の人
- 完全防水が必須の環境でパックライナーを使いたくない人
- すぐに手に入れたい人(入手困難のため)
ただし、Desert Packは「ULバックパックへの優れたエントリーポイント」と評価されているから、UL初心者でもDesert Packから始めるという選択肢はあるぞ。
なるほど!まずはDesert Packで練習して、慣れたらV2に挑戦ですね。
Pa'lanteの革新性:業界に与えた影響
最後に、Pa'lanteがULバックパック業界に与えた影響について話しておこう。
Pa'lanteが導入した以下の機能は、今や多くのULバックパックブランドが採用する業界標準になっているんだ。
- ソウイン(縫い付け式)のショルダーストラップポケット
- ボトムポケット
- 外側メッシュポケット
そう。Googleで「ultralight backpack」と検索すると、これらの機能を持つパックが山ほど出てくる。Pa'lanteは、これらを先駆けて導入し、より広いオーディエンスにアクセス可能にした革新者なんだ。
最後に:「歩き続けるため」の道具
ボトムポケット、使ってみたいです!お菓子いっぱい詰め込みたい!
お菓子もいいが、ゴミを入れるのにも便利だぞ。食べたゴミをサッと底にしまう。
なるほど!ゴミ箱にもなるんですね。パランテ、賢い!
Pa'lanteのパックは、単なる「軽いリュック」じゃない。「立ち止まらずに歩き続ける」という哲学を体現した道具なんだ。ボトムポケットも、ショルダーストラップポケットも、サイドポケットも、全ては「歩きながらアクセスできる」ように設計されている。
確かに!いちいち立ち止まらなくていいんですもんね。
創業者のAndyがパナマで学んだ"Pa'lante"という言葉には、「前へ、進み続ける」という意味がある。そのスピリットが、このパックには詰まっているんだ。
そう。見つけたら即決するくらいの勢いが必要だ。palantepacks.jpやMoonlight Gearの店頭、Instagram(@palantepacksjapan)をこまめにチェックするんだ。
了解です!歩きながらチョコを食べる日を夢見て、頑張って探します!
その心意気だ。Pa'lanteを手に入れたら、ぜひロングトレイルに挑戦してみてくれ。「立ち止まらずに歩き続ける」楽しさを、きっと実感できるはずだ。
免
本記事の情報は執筆時点のものです。最新の製品仕様や価格については、メーカーの公式サイト(palantepacks.com、palantepacks.jp)や販売店でご確認ください。登山は自己責任で行い、装備は自分の体力や技術に合わせて選びましょう。