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導入
「登山に救急セット?絆創膏と消毒液があればいいんでしょ?」
そんなふうに思っていませんか?実は、山の中でトラブルが起きたとき、絆創膏と消毒液だけでは対応できないことがほとんどです。捻挫で動けなくなったら?蜂に刺されたら?急に寒くなって体が震え出したら?
この記事では、登山歴20年のベテランガイドが実際に持ち歩いているファーストエイドキットの中身を、「なぜそれが必要なのか」「どう使うのか」まで徹底的に解説します。
登場人物紹介
登山歴半年の初心者。見た目重視で登山を始めたが、最近は安全面も気になり始めた。専門用語が苦手で素直な疑問をぶつける。
登山歴20年のベテラン。安全第一をモットーに、これまで数々のトラブルを乗り越えてきた経験を持つ。道具への愛と知識が深い。
そもそも、なぜ登山でファーストエイドキットが重要なのか
先生、ファーストエイドキットって、正直めんどくさいんですけど。コンビニで絆創膏買えばよくないですか?
当たり前のことだが、山の中でケガをしても、すぐに救急車は来ない。ヘリコプターを呼べたとしても、天候次第では何時間も待つことになる。その間、自分で対処するしかないんだ。
怖がらせたいわけじゃない。ただ、「備えあれば憂いなし」というだろう。実際、私も10月の涸沢でパーティーの仲間が捻挫したとき、テーピングと三角巾で応急処置をして、なんとか自力下山できたことがある。あのとき、もしファーストエイドキットがなかったらと思うとぞっとするよ。
参考情報: 「山の環境は普段と異なり、体調を崩しやすいため、適切な薬を準備しておくことで、万が一の事態に対応できます。」出典
https://yamakei-online.com/
ファーストエイドキットの必須アイテム
じゃあ、何を入れればいいんですか?全部入れたらザックがパンパンになりそう……。
アルプスに行くわけじゃないから、そこまで大げさにならなくていい。だが、最低限これだけは必要というものがある。一つずつ説明しよう。
絆創膏(キズパワーパッドがおすすめ)
まず絆創膏。ただし、普通の絆創膏だけではなく、キズパワーパッド のような湿潤療法タイプのものを入れておくといい。
簡単に言うと、傷を乾かさずに治す方法だ。昔は「傷は乾かしてかさぶたを作る」のが常識だったが、今は「傷を湿らせたまま覆う」方が早くきれいに治ることがわかっている。
キズパワーパッドは傷口から出る体液を保持して、痛みを軽減しながら治癒を促進する。靴擦れにも効果抜群だ。ひどい水ぶくれができても、これを貼れば痛みがかなり和らいで歩けるようになる。
参考情報: 「キズパワーパッドは、靴擦れの予防および治療の両方に使用できます。事前に貼ることで、摩擦から皮膚を保護し、水ぶくれの発生を防ぎます。」出典
https://band-aid.jp/
予防にも使えるんですね!じゃあ靴擦れしやすいところに最初から貼っておけばいいってこと?
湿潤療法の注意点
ただし、湿潤療法が使えない傷もある。深い傷、動物に噛まれた傷、化膿している傷、かさぶたがすでにできている傷には使わないこと。そういう場合は素直に医療機関へ行くんだ。
ワセリン
似たようなものだが、登山では靴擦れ予防に使う。足にワセリンを塗ると、靴と皮膚の摩擦が減って靴擦れしにくくなる。
薄く塗れば大丈夫だ。警視庁の災害対策課も推奨している方法だぞ。
参考情報: 「警視庁の災害対策課も、登山靴を履く際のかかとの摩擦防止にワセリンの使用を推奨しています。」出典
https://huffingtonpost.jp/
警視庁!ちゃんとした情報なんですね。じゃあやってみようかな。
長時間歩く場合は、10〜15kmごとに塗り直すとより効果的だ。
参考情報: 「登山前に足裏全体や靴擦れしやすい部位(かかとなど)にワセリンを薄く塗ります。長時間歩く場合は、10〜15kmごとに塗り直すと良いでしょう。」出典
https://hiker-h.com/
テーピングテープ
テーピングテープは必須中の必須だ。捻挫の固定、傷口の保護、包帯の代わり、靴擦れ予防……使い道は無限にある。
でも、テーピングって難しくないですか?巻き方とか全然わからないんですけど。
たしかに専門的なテーピング技術は練習が必要だ。だが、最近は 手で切れるタイプ や プレカットタイプ が売っている。これならハサミも不要で、初心者でも貼るだけで使える。
参考情報: 「テーピングは、患部の固定や圧迫、保護、さらには靴擦れ予防や破損した靴の補修など多岐にわたる用途で使用されます。」出典
https://yamahack.com/
そうだ。ニチバンやバトルウィンから出ている。「足首用」「膝用」など部位ごとにカットされていて、説明書どおりに貼るだけで固定できる。
ただし、テーピングはあくまで応急処置だ。痛みが引いても治ったわけじゃないから、下山後は必ず医療機関に行くこと。
三角巾(2枚あると安心)
三角巾って、腕を吊るやつですよね?骨折しなきゃ使わないんじゃ……。
とんでもない。三角巾ほど多用途なアイテムはないぞ。止血、圧迫、腕を吊る、骨折部位の固定、頭に巻く、添え木を固定する……。
医療現場ではあまり使われなくなったが、アウトドアのファーストエイドでは今でも重宝されている。軽くてかさばらないから、2枚持っていくといい。
参考情報: 「三角巾は、その多様性からアウトドアでのファーストエイドキットにおいて不可欠なアイテムとされています。」出典
https://kuri-adventures.com/
でも使い方がわからなかったら意味ないですよね……。
それはそうだ。だから事前に練習しておくことが大事なんだ。腕の吊り方くらいはYouTubeでも学べる。いざというときにもたもたしていたら意味がないからな。
ポイズンリムーバー
蜂やブヨに刺されたとき、毒を吸い出すための器具だ。
口で吸い出すやつじゃダメなんですか?映画でよく見ますけど。
あれはやめたほうがいい。口の中の細菌が傷口に入る可能性があるし、毒を飲み込むリスクもある。ポイズンリムーバーなら安全だ。
使い方
使い方は簡単だ。
1. ピストンを引き上げる
2. 刺された部位に吸い口を垂直に当てる
3. ピストンを押し下げて毒を吸い上げる
4. 60〜90秒間維持して、2〜3回繰り返す
参考情報: 「刺されてから2分以内の使用が最も効果的とされており、時間が経過するほど効果は薄れると言われています。」出典
https://portal.miyazaki.jp/
そうだ。だからザックの奥底にしまい込んでちゃダメだぞ。すぐ取り出せる場所に入れておくんだ。
注意点:マダニには使わない
ひとつ重要な注意点がある。マダニにはポイズンリムーバーを使わないこと。
マダニは口器を皮膚に深く突き刺して吸血している。無理に吸い出そうとすると、マダニの一部が皮膚に残って、感染症のリスクが高まる。
参考情報: 「マダニに刺された場合、ポイズンリムーバーの使用は推奨されません。マダニは口器を皮膚にしっかりと突き刺して吸血するため、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残り、細菌感染を引き起こす可能性があります。」出典
https://pref.miyagi.jp/
そのまま医療機関に行くんだ。自分で取ろうとしないこと。
エマージェンシーシート
これ、100均でも見たことあります!キラキラしたやつですよね。
そうだ。ただ、100均のものは破れやすいから、できればアウトドアメーカーのしっかりしたものを選んだほうがいい。
体温保持だ。山では天候が急変することがある。汗をかいた状態で風に吹かれたり、雨に濡れたりすると、あっという間に体温が奪われる。そういうときにこれを巻くと、体の熱を反射して保温してくれる。
参考情報: 「エマージェンシーシート自体が発熱するわけではなく、体の熱を反射してシート内に閉じ込めることで保温効果を発揮します。」出典
https://greenfield.style/
そうだ。だから体力が残っているうちに使わないと意味がない。低体温症になってからでは遅いんだ。
使い方のコツ
ちなみに、銀色の面を内側にして巻くとより効果的だ。遭難時には外側のキラキラが救助隊の目印にもなる。
ツェルトと組み合わせるとさらに効果的だが、それはまた別の機会に話そう。
参考情報: 「エマージェンシーシートとツェルトは、『家』と『布団』に例えられるように、それぞれ異なる役割を持つため、両方携行することが理想的とされています。」出典
https://yamahack.com/
常備薬(鎮痛剤・胃腸薬・下痢止め)
もちろんだ。山では頭痛や腹痛が起きやすい。高度が上がると気圧の変化で頭が痛くなることもあるし、冷えや緊張でお腹を壊すこともある。
鎮痛剤
鎮痛剤は、普段から飲み慣れているものを持っていくといい。ロキソニン、イブ、タイレノールなど、自分に合うものがあるはずだ。
参考情報: 「普段から使い慣れている薬であれば、効果や副作用を把握しているため、安心して服用できます。」出典
https://yamakei-online.com/
胃腸薬・下痢止め
胃腸薬と下痢止めも必須だ。特に下痢止めは緊急性が高い。
確かに、山の中でお腹壊したら最悪ですもんね……トイレないし。
ストッパ下痢止めEXのような速効性のあるものがおすすめだ。ただし、下痢止めは症状を抑えるだけで根本解決にはならないから、下山後は医療機関へ。
重要な注意
それと、これは絶対に守ってほしいが、薬の貸し借りは禁止 だ。
え、なんでですか?困ってる人がいたら貸したくなりますけど……。
体質やアレルギーは人それぞれ違う。自分に合う薬が他人にも合うとは限らない。最悪の場合、アレルギー反応で命に関わることもある。
参考情報: 「薬の貸し借りは、体質やアレルギーなどにより予期せぬトラブルを招く可能性があるため、絶対に避けましょう。」出典
https://yamakei-online.com/
その他の便利アイテム
他にも、あると便利なものをいくつか紹介しておこう。
全部持つ必要はない。自分の山行スタイルに合わせて選べばいい。
| アイテム |
用途 |
| 滅菌ガーゼ |
傷口の保護、止血 |
| 弾性包帯 |
圧迫、固定 |
| 使い捨て手袋 |
衛生的な処置 |
| ハサミ・ピンセット |
テープ切断、異物除去 |
| 安全ピン |
三角巾の固定など |
| 経口補水液パウダー |
熱中症対策 |
| ホイッスル |
救助要請 |
| ビニール袋 |
ゴミ入れ、防水 |
他人の傷を処置するときに必要だ。血液に触れることで感染症のリスクがある。自分を守るためにも必須だぞ。
登山でよくあるケガと対処法
圧倒的に多いのは 捻挫 だな。次いで擦り傷・切り傷、そして靴擦れ。
捻挫の応急処置
捻挫の応急処置には「RICES」という覚え方がある。
| 頭文字 |
意味 |
内容 |
| R |
Rest(安静) |
患部を動かさない |
| I |
Ice(冷却) |
沢の水などで冷やす |
| C |
Compression(圧迫) |
テーピングなどで圧迫 |
| E |
Elevation(挙上) |
患部を心臓より高く |
| S |
Support(固定) |
テーピングや添え木で固定 |
冷やすのって、保冷剤とかないと無理じゃないですか?
沢があれば沢の水を使える。ペットボトルの水でもいい。ちなみに、湿布は「冷たい感覚」があるだけで、実際に冷やす効果はほとんどないから注意だ。
参考情報: 「登山中に足首の捻挫は非常に多く、特に下山時や不安定な岩場で発生しやすいです。靴を脱いでしまうと、腫れて再度履けなくなる可能性があるので、靴の上から固定する方法も有効です。」出典
https://harinakano-physicalcare.com/
脱ぐと腫れて履けなくなることがある。靴を履いたまま固定するのも一つの方法だ。
切り傷・擦り傷の処置
切り傷や擦り傷の処置で一番大事なのは 洗浄 だ。消毒じゃなくて、水で洗うことを優先する。
消毒液は細菌だけでなく、傷を治すために必要な細胞も殺してしまうことがある。だから今は消毒よりも水での洗浄が推奨されているんだ。
参考情報: 「傷口の洗浄は止血よりも重要と言われることもあります。水が貴重な場合は、ペットボトルのキャップに穴を開けて水圧を利用すると少ない水で洗浄できます。」出典
https://funq.jp/
低体温症・熱中症・高山病
もちろんある。低体温症、熱中症、高山病。この3つは命に関わることもある。
低体温症
低体温症は、体の中心部の体温が35℃以下になる状態だ。震え、眠気、ふらつきが初期症状。進行すると意識が薄れ、最悪の場合は死に至る。
なる。汗をかいた状態で風に吹かれたり、雨に濡れたりすると一気に体温が下がる。私も8月の北岳で、雨に打たれてガタガタ震えた経験がある。
対処法
対処法は、まず雨風をしのげる場所に避難すること。濡れた服があれば着替え、エマージェンシーシートで体を包む。温かい飲み物を飲むのも効果的だ。
参考情報: 「深部体温が32℃以下の重症の場合、乱暴な扱いやマッサージは致死的不整脈を誘発する可能性があるため、安静にさせます。」出典
https://cmc-jp.net/
マッサージしちゃダメなんですか?温まりそうなのに。
重症の場合はダメだ。心臓に負担がかかって不整脈を起こすことがある。震えている段階なら体を動かして発熱させてもいいが、深刻な場合は安静が第一だ。
熱中症
熱中症は夏の低山で特に多い。めまい、頭痛、吐き気などの症状が出たら要注意だ。
そうだ。ただ、水だけじゃなく塩分も必要だ。スポーツドリンクか経口補水液がベスト。
参考情報: 「熱中症は、体温調節機能が破綻することで起こります。」出典
https://fujisan-climb.jp/
対処法
症状が出たら涼しい場所に移動して、首・脇の下・足の付け根を冷やす。意識がなければすぐに救助要請だ。
高山病
高山病は標高2,000m以上で起こりやすい。頭痛、めまい、吐き気が典型的な症状だ。
そうだ。予防のコツは「ゆっくり登る」「深呼吸する」「こまめに水分補給する」こと。
参考情報: 「高山病の最も効果的な対処法は、高度を下げて酸素の取り込み量を増やすことです。」出典
https://yamakei-online.com/
高度を下げる のが一番効果的だ。無理して登らず、一旦下山することを考えよう。
ファーストエイドキットの収納・ポーチ選び
ところで、これだけのものをどうやって持ち歩くんですか?
ファーストエイド専用のポーチやバッグを使う。モンベルやドイターから出ているものがおすすめだ。
参考情報: 「モンベルのファーストエイドバッグは、内部に仕分け用のポケットやインナーポーチを備え、ジッパーを開くとトレーのように広がり、素早い処置を可能にする工夫がされています。」出典
https://montbell.jp/
ダメじゃないが、専用品は中に仕切りがあって整理しやすい。緊急時に「どこにあったっけ?」と探す余裕はないからな。
ポーチ選びのポイント
| ポイント |
理由 |
| 目立つ色(赤など) |
すぐに見つけられる |
| 防水性 |
雨でも中身を守る |
| 開口部が大きい |
素早く取り出せる |
| 仕切り・ポケットが多い |
整理しやすい |
そして何より大事なのは、ザックのアクセスしやすい場所に入れておくこと だ。
参考情報: 「ファーストエイドキットは、緊急時にすぐに取り出せるように、ザックの分かりやすい場所に入れておきましょう。」出典
https://futabanet.jp/
まとめ
なんか、思ってたより奥が深いですね、ファーストエイドキット。
山では何が起きるかわからない。だからこそ、備えが大事なんだ。
私、今まで絆創膏5枚くらいしか持ってなかった……。
まあ、一度に全部揃えなくてもいい。まずは今日紹介したものの中から、少しずつ揃えていけばいい。
テーピングとキズパワーパッドは絶対買います!あと、ポイズンリムーバーもなんかカッコいいし。
見た目で選ぶな。でもまあ、きっかけは何でもいい。使い方をしっかり覚えて、いざというときに備えてくれ。
先生の最後のアドバイス
ファーストエイドキットは、自分と仲間を守るためのものだ。だが、道具があるだけでは意味がない。どう使うか を知っていることが一番大事だぞ。
ファーストエイドキット チェックリスト
| カテゴリ |
アイテム |
用途 |
| 傷・靴擦れ |
キズパワーパッド |
傷の保護・治癒 |
| 傷・靴擦れ |
絆創膏(各サイズ) |
小傷の保護 |
| 傷・靴擦れ |
ワセリン |
靴擦れ予防 |
| 固定・保護 |
テーピングテープ |
捻挫固定など万能 |
| 固定・保護 |
三角巾(2枚) |
固定・止血・多用途 |
| 固定・保護 |
弾性包帯 |
圧迫・固定 |
| 衛生用品 |
滅菌ガーゼ |
傷口保護 |
| 衛生用品 |
使い捨て手袋 |
感染予防 |
| 器具 |
ハサミ・ピンセット |
切断・異物除去 |
| 器具 |
ポイズンリムーバー |
毒虫対策 |
| 薬 |
鎮痛剤 |
頭痛・痛み対策 |
| 薬 |
胃腸薬・下痢止め |
腹痛対策 |
| 緊急用 |
エマージェンシーシート |
体温保持 |
| その他 |
ホイッスル |
救助要請 |
| その他 |
ビニール袋 |
ゴミ入れ・防水 |