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「寝袋を買おう」と思って調べると、必ず名前が出てくるブランド「イスカ (ISUKA)」。でも、いざ公式サイトを見ると「エア」「アルファライト」「ダウンプラス」「3Dシルエット」……種類が多すぎて、どれを選べばいいのか分からない!そんな経験、ありませんか?

この記事では、登山ガイドの先生がイスカの寝袋の「モデルごとの違い」を徹底解説。初心者でも迷わず選べるように、それぞれの特徴、メリット・デメリット、おすすめユーザーを分かりやすくお伝えします。

Image Prompt: A photorealistic image of ISUKA sleeping bags displayed in a mountain camping scene at dusk, with a tent in the background and warm lighting from inside the tent. Multiple colorful ISUKA sleeping bags are laid out on the ground, showing their distinctive 3D construction and Japanese craftsmanship. High quality, outdoor photography style.


登場人物紹介

JK (女子高生)
登山を始めたばかりの初心者。見た目や快適さを重視するタイプ。専門用語には弱いが、素朴な疑問や不満は正直に口にする。

先生 (登山ガイド)
登山歴20年のベテランガイド。道具への深い知識と愛情を持つ。機能性と安全性を最優先するが、初心者の気持ちも理解して丁寧に解説してくれる。


なぜイスカの寝袋は種類が多いのか?

JK
先生、寝袋買おうと思ってイスカのサイト見たんですけど、種類が多すぎて何がなんだか……。
先生
ははは、確かにな。イスカは日本の老舗寝袋メーカーで、用途や季節、体型に合わせて細かくラインナップを分けているんだ。だから選択肢が多い。
JK
用途って、寝るだけじゃないんですか?
先生
寝るのは同じだが、夏山の小屋泊まり冬の雪山テント泊では、必要な保温力がまったく違う。それに、身長や体格によっても最適な寝袋の形は変わるんだ。
JK
なるほど……じゃあ、どうやって選べばいいんですか?
先生
まずは大きく分けて、中綿の種類で2つに分かれる。

イスカの主なシリーズ

  1. ダウンシリーズ (エア、ダウンプラスなど)

    • 中綿: 高品質ダウン (羽毛)
    • 特徴: 軽量・コンパクト・保温力が高い
    • 用途: 本格的な登山、テント泊、軽量化重視
  2. 化繊シリーズ (アルファライトなど)

    • 中綿: 化学繊維 (ポリエステル)
    • 特徴: 濡れに強い・価格が安い・重い
    • 用途: 初心者、車中泊、キャンプ、予算重視
JK
ダウンの方が良さそうですけど、高いんですよね……?
先生
その通りだ。ダウンは軽くて暖かいが、価格は化繊の2〜3倍する。それに、濡れると保温力が落ちるという弱点もある。初めてのテント泊なら、まずは化繊で慣れるのも悪くない選択だぞ。
JK
じゃあ、私は化繊でいいかも……。
先生
待て待て、まだ決めるのは早い。それぞれのモデルを詳しく見ていこう。

初心者でも手が届く!「アルファライト」シリーズ

化繊入門なら「アルファライト 700X」

先生
まずは化繊シリーズの代表格、アルファライト 700Xから紹介しよう。
JK
700Xって、何の数字ですか?
先生
これは快適使用温度の目安だ。700Xなら、だいたい0℃前後まで快適に眠れる設計になっている。夏の3,000m級の山や、春秋の低山テント泊に向いているな。

Image Prompt: A photorealistic close-up of an ISUKA Alpha Light 700X sleeping bag in orange color, laid out on a camping mat inside a tent. The synthetic insulation is visible through the semi-transparent fabric. Morning light filters through the tent, creating a warm, cozy atmosphere. High detail, outdoor gear photography.

機能とメリット

先生
アルファライトの最大の魅力は、濡れても保温力が落ちにくいことだ。化学繊維は水を吸わないから、結露や汗で湿っても、ダウンほど性能が下がらない。
JK
テントの中って、そんなに濡れるんですか?
先生
これが想像以上に濡れるんだ。私が10月に北アルプスの涸沢でテント泊した時の話だが、朝起きたらテントの内壁が水滴でびっしょりだった。外気温が氷点下近くまで下がって、テント内の暖かい空気が冷やされて結露したんだ。
JK
え、それって寝袋も濡れちゃうんですか?
先生
濡れる。テントの壁に寝袋が触れていたら、その部分が湿ってくる。それに、人間は一晩でコップ1杯分の汗をかくと言われている。ダウンの寝袋だと、この湿気を吸って羽毛が固まり、2日目、3日目と保温力がどんどん落ちていくんだ。
JK
うわ、それは困りますね……。
先生
ところが化繊なら、この問題がほとんどない。私が以前、5日間の縦走でアルファライト 700Xを使った時、毎朝寝袋を干す時間もなかったが、最終日まで暖かさは変わらなかった。化学繊維は水分を吸わないから、湿気の影響を受けにくいんだ。
JK
それは安心ですね!でも、化繊って安っぽいイメージが……。
先生
それは誤解だ。イスカのアルファライトに使われているMicro Liteという化繊は、中空構造になっている。繊維の中に空気の層があって、その空気が断熱材の役割を果たすんだ。
JK
中空構造……?
先生
ストローを想像してくれ。中が空洞になっているだろう?あれと同じで、繊維の中に空気を閉じ込めることで、軽量化と保温性の両立を実現しているんだ。昔の化繊寝袋は本当に重くて嵩張ったが、今の技術は進化している。
JK
へー、化繊も侮れないんですね。
先生
それに、価格が手頃なのも大きい。アルファライト 700Xなら2万円前後で買える。ダウンの同等品だと5万円以上するからな。初心者が「テント泊、自分に合うかな?」と試すには、ちょうどいい価格帯だ。
JK
2万円なら、なんとか……!
先生
実際、私がガイドで連れて行く初心者の8割は、最初は化繊寝袋を使っている。そして、年に10泊以上するようになった人だけが、ダウンに買い替えていく。それくらい、化繊は「入門用」として優秀なんだ。

リアリティとデメリット

JK
でも、重いんですよね?
先生
……そこが最大の弱点だ。アルファライト 700Xの重量は約1,300g。同じ保温力のダウン寝袋なら600〜700g程度だから、倍以上重い
JK
うわ、それはキツイかも……。
先生
私が初めてアルファライトを背負って槍ヶ岳に登った時、ザックの重さが15kgを超えた。テントや食料も入れていたが、寝袋だけで1kg以上あると、やはり肩と腰にくる。特に、標高差1,500m以上の登りだと、この重さが後半にボディブローのように効いてくるんだ。
JK
それは……しんどそうですね。
先生
ただし、車でキャンプ場まで行くとか、小屋泊メインで緊急用に持つなら、重さはそこまで問題にならない。実際、私は今でも、車中泊やバイクツーリングの時はアルファライトを使っている。重さを気にしなくていい状況なら、濡れに強い化繊の方が安心だからな。
JK
なるほど……私、最初は小屋泊から始めようと思ってるので、アリかもしれません。
先生
それなら良い選択だ。それに、収納サイズも正直に言うと大きい。圧縮袋に入れても直径20cm × 長さ40cmくらいになる。ザックの底に横向きに入れると、他の荷物が入らなくなることもある。
JK
えー、そんなに……。
先生
だから私は、ザックの外側にくくりつけることが多かった。底の部分にストラップで固定するんだ。ただし、雨に濡れるリスクがあるから、防水のスタッフバッグに入れることが必須だぞ。
JK
外付けかぁ……ちょっとカッコ悪いかも。
先生
ははは、見た目を気にするか。でも、ベテランの登山者でも、嵩張る荷物は外付けにすることが多い。機能性を優先するのが山の鉄則だ。
JK
わかりました……。
先生
ただし、化繊はメンテナンスが楽という大きなメリットがある。ダウンは洗濯に気を使うが、化繊なら洗濯機で丸洗いできるし、保管も神経質にならなくていい。私は年に1回、シーズン終わりに洗濯機で洗って、陰干しして、そのまま押し入れに放り込んでいる。それでも5年以上使えているぞ。

Q&Aセクション

Q1: 洗濯機で洗っても大丈夫ですか?

先生
大丈夫だ。ただし、ネットに入れて、弱水流で洗うこと。脱水は軽めにして、陰干しでしっかり乾かせば問題ない。

Q2: 何年くらい使えますか?

先生
使用頻度にもよるが、年に10泊程度なら5〜7年は使える。ただし、化繊は経年劣化でだんだん保温力が落ちてくるから、ダウンほど長持ちはしないな。

Q3: 身長が低いんですが、サイズはありますか?

先生
イスカはショートサイズも用意している。身長160cm以下なら、ショートを選ぶと軽量化できるし、足元の余分な空間が減って暖かいぞ。

軽量化の本命!「エア」シリーズ

本格登山なら「エア 500X」

先生
次は、イスカのダウンシリーズの中でも最軽量クラスの「エア」シリーズだ。
JK
エアって、空気みたいに軽いってことですか?
先生
まさにその通り。エア 500Xは、快適温度0℃クラスなのに、重量はわずか約560g。化繊の半分以下だ。

Image Prompt: A photorealistic image of an ISUKA Air 500X sleeping bag in deep blue color, compressed in its stuff sack next to a 500ml water bottle for size comparison. The ultra-lightweight fabric has a slight sheen. Background shows a minimalist ultralight backpacking setup on a wooden floor. Professional product photography lighting.

機能とメリット

先生
エアシリーズの中綿には、800フィルパワーの高品質ダウンが使われている。
JK
フィルパワー……?呪文ですか?
先生
ははは、専門用語だったな。フィルパワーというのは、ダウンの膨らむ力を示す数値だ。数字が大きいほど、少ない量で高い保温力を発揮する。800FPは、かなり高品質なダウンだぞ。
JK
つまり、少ないダウンで暖かいから、軽くできるってことですね!
先生
その理解で正しい。具体的に言うと、1オンス(約28g)のダウンが800立方インチ(約13リットル)まで膨らむということだ。この膨らんだ空気の層が、体温を逃がさない断熱材になる。
JK
13リットル……ペットボトル6本分以上ですか!
先生
そうだ。だから、少ないダウン量で大きな保温力を得られる。私が南アルプスの北岳で3泊4日の縦走をした時、エア 500Xを使ったんだが、9月下旬で気温が0℃近くまで下がったのに、寝袋の中は暖かくて快適だった。
JK
へー、本当に暖かいんですね。
先生
さらに、エアシリーズは表生地が超軽量ナイロンでできている。具体的には20デニールという薄さだ。
JK
デニール……また呪文が……。
先生
ははは、デニールは糸の太さを表す単位だ。数字が小さいほど細くて軽い。一般的なナイロン生地が40〜70デニールだから、エアシリーズの20デニールは半分以下の薄さなんだ。
JK
そんなに薄くて大丈夫なんですか?
先生
薄いが、リップストップ構造という技術で引き裂き強度を確保している。生地に格子状の補強糸が織り込まれていて、万が一破れても、そこから裂け目が広がらないようになっているんだ。
JK
すごい技術……!
先生
収納サイズも驚異的だ。エア 500Xは直径14cm × 長さ24cm程度に圧縮できる。これは2リットルのペットボトルと同じくらいの体積だ。ザックの中でほとんど場所を取らないから、長期縦走や軽量化を重視する登山者に絶大な人気がある。
JK
2リットルのペットボトルサイズ……それは小さい!
先生
私が北アルプスの表銀座縦走(4泊5日)をした時、40リットルのザックで全装備を収めることができた。これが化繊寝袋だったら、60リットルのザックが必要だっただろう。ザックが小さくなれば、それだけ軽くなるし、バランスも良くなるんだ。

リアリティとデメリット

JK
でも、お高いんでしょう……?
先生
……その通りだ。エア 500Xは5万円前後する。初心者には躊躇する価格だろうな。
JK
うっ……私のバイト代が……。
先生
正直に言うと、私も最初にエアシリーズを買う時は2週間悩んだ。当時の私の月給の4分の1くらいの値段だったからな。でも、結局買って、10年以上使い続けている。長い目で見れば、コストパフォーマンスは悪くないんだ。
JK
10年も使えるんですか?
先生
適切にメンテナンスすれば、ダウンは長持ちする。ただし、ダウンは濡れに弱いという致命的な弱点がある。雨や結露で濡れると、羽毛が固まって保温力が激減する。
JK
めんどくさそう……。
先生
実際、私は一度失敗している。八ヶ岳の赤岳でテント泊した時、テントの結露で寝袋の肩の部分が濡れてしまったんだ。朝起きたら、その部分のダウンがぺしゃんこになっていて、保温力が明らかに落ちていた。
JK
えー、それは困りますね……。
先生
だから、防水スタッフバッグに入れるとか、テント内で濡れないように管理するといった注意が必要だ。私は今では、寝袋をザックに入れる時は必ず二重の防水バッグに入れている。外側のザックカバーだけでは、完全に防水できないからな。
JK
二重……そこまでするんですか。
先生
それだけダウンの濡れは致命的なんだ。山の中で寝袋が濡れて使えなくなったら、低体温症のリスクがある。特に、雪山や厳冬期の山では命に関わる。
JK
怖い……。
先生
あと、生地が薄いから破れやすいという面もある。私は一度、テント内でヘッドライトを探していて、寝袋をナイフの刃に引っかけてしまったことがある。5cmくらいの裂け目ができて、そこからダウンが漏れ出してきたんだ。
JK
うわ、それは焦りますね……。
先生
幸い、リペアテープを持っていたから、その場で応急処置できた。でも、それ以来、テント内では鋭利なものを寝袋の近くに置かないように気をつけている。ザックに詰める時も、無理やり押し込んだりせず、優しく丸めて入れるようにしているぞ。
JK
扱いが難しいんですね……。
先生
ただし、軽さは正義だ。長い縦走で1kgの差は、体力の消耗に直結する。私が剱岳から立山まで3泊4日で縦走した時、総重量を12kgに抑えられたのは、エアシリーズのおかげだった。化繊寝袋だったら、15kg近くになっていただろう。この3kgの差が、最終日の疲労度を大きく変えるんだ。
JK
3kgって、結構違うんですね。
先生
本格的に山をやるなら、いずれはダウンに移行することになるだろうな。ただし、最初の1〜2年は化繊で経験を積むことを勧める。ダウンの扱い方を理解してから買った方が、失敗が少ないぞ。

Q&Aセクション

Q1: ダウンが濡れたらどうすればいいですか?

先生
まずは絞らずに軽く水気を切る。その後、風通しの良い場所で陰干しして、完全に乾かすんだ。乾燥機を使う場合は、低温設定でテニスボールを一緒に入れると、ダウンがほぐれやすい。

Q2: 保管方法は?

先生
圧縮袋に入れっぱなしにしないこと。ダウンは圧縮され続けると、復元力が落ちる。使わない時は、大きめの収納袋に入れて、風通しの良い場所に吊るしておくのがベストだ。

Q3: 修理はできますか?

先生
イスカは有料修理サービスを提供している。小さな破れなら、自分でリペアシートを貼ることもできるぞ。

日本人の体型に最適化!「3Dシルエット」構造

快適性を追求するなら「ダウンプラス ポカラX」

先生
最後に紹介するのは、イスカの独自技術3Dシルエットを採用した「ダウンプラス ポカラX」だ。
JK
3D……?立体的ってことですか?
先生
その通り。一般的な寝袋は、平面的な生地を縫い合わせた「筒」のような形をしているが、イスカの3Dシルエットは、人間の体の形に合わせて立体裁断されているんだ。

Image Prompt: A photorealistic cutaway diagram showing the ISUKA 3D silhouette construction of a sleeping bag, with a person lying inside. The image shows how the bag conforms to the body's natural shape, with extra room at shoulders and knees, and a tapered foot box. Technical illustration style with annotations, warm interior lighting, professional outdoor gear catalog quality.

機能とメリット

先生
3Dシルエットの最大の特徴は、肩幅と胸周りにゆとりを持たせ、足元に向かって細くなるデザインだ。これにより、無駄な空間を減らして保温効率を高めつつ、寝返りも打ちやすいんだ。
JK
普通の寝袋だと、寝返り打ちにくいんですか?
先生
マミー型寝袋は、保温性を高めるために体に密着する設計だから、窄屈に感じる人も多い。私が以前、アメリカの有名ブランドの寝袋を使った時、肩周りが窄屈すぎて、横向きに寝ると生地が引っ張られる感覚があったんだ。
JK
え、それって眠れなくないですか?
先生
正直、快適ではなかった。海外ブランドの寝袋は、体格の大きい欧米人基準で設計されていることが多い。特に肩幅が狭い日本人の体型には、合わないことがあるんだ。
JK
あー、確かに海外の人って体格が違いますもんね。
先生
イスカは日本のメーカーだから、日本人の平均的な体型データを元に設計している。具体的には、肩幅を広めに、腰から足元にかけて細くするテーパード設計になっている。だから、フィット感が抜群なんだ。
JK
それは嬉しい!
先生
私が初めてイスカの3Dシルエット寝袋を使った時、「これだ!」と思ったんだ。肩周りに突っ張り感がなく、横向きに寝ても、仰向けに寝ても、生地が体に優しくフィットする感覚があった。
JK
へー、そんなに違うんですね。
先生
それに、足元のフットボックスも工夫されている。足の形に合わせて台形状になっていて、足先の空間が減って暖かいんだ。普通の寝袋だと、足元が筒状で空間が多いから、その分、冷えやすいんだ。
JK
足先が冷えると、寝られないですもんね。
先生
特に女性は冷え性の人が多いから、この足元の保温は重要だ。イスカの女性用モデルは、さらに足元のダウン量を増やしているんだ。
JK
女性用って、ただ小さいだけじゃないんですか?
先生
違う。イスカの女性用モデルは、同じ温度帯でもダウン量が男性用より多いんだ。例えば、男性用が500gのダウンを使っているのに対して、女性用は550g使っている、という具合だ。
JK
へー、それは嬉しい配慮ですね!
先生
さらに、ダウンプラス ポカラXは720フィルパワーのダウンを使用していて、快適温度は-6℃まで対応。秋冬の3,000m級の山でも安心して使えるぞ。
JK
-6℃って、かなり寒いですよね。
先生
私が11月に北八ヶ岳でテント泊した時、夜間の気温が-8℃まで下がったんだが、ポカラXの中は暖かくて、朝までぐっすり眠れた。快適温度を少し下回っても、寝間着を着ていれば十分暖かいんだ。

リアリティとデメリット

JK
でも、これも高いんですよね……?
先生
ポカラXは4万円前後だ。エアシリーズよりは少し安いが、それでも初心者には大きな出費だろうな。
JK
うーん……。
先生
それに、重量は約900gと、エアシリーズよりは重い。ダウン量が多い分、保温力は高いが、軽量化を最優先するなら、エアシリーズの方が有利だ。
JK
軽さか、暖かさか……悩みますね。
先生
私の経験で言うと、夏山メインならエアシリーズ、秋冬山メインならダウンプラスという使い分けが良い。私は両方持っていて、季節や山域に合わせて使い分けているんだ。
JK
2つも買うんですか!?
先生
最終的にはそうなる人が多い。最初は1つで始めて、自分がどんな山に行くことが多いかがわかってきたら、2つ目を考えればいい。
JK
なるほど。
先生
あと、3Dシルエットは体にフィットする分、圧迫感を感じる人もいる。私の知り合いで、体格が大きい人がレギュラーサイズを買ったら、「窄屈すぎて眠れない」と言っていた。
JK
えー、それは困りますね。
先生
寝袋の中で足を伸ばしたり、膝を曲げたりする余裕が欲しいなら、ワンサイズ大きめを選ぶといい。ただし、大きすぎると今度は空間が多くて保温力が落ちるから、バランスが難しいんだ。
JK
試着できればいいんですけど……。
先生
大手のアウトドアショップなら、展示品を広げて中に入らせてくれることもある。必ず実物を確認してから買うことを強く勧めるぞ。私も最初の寝袋は、店員さんにお願いして、床に広げてもらって、15分くらい中に入っていたんだ。
JK
15分も!?
先生
寝袋は高い買い物だからな。失敗したくなかった。実際、その時に仐向け、横向き、うつ伏せといろんな姿勢を試して、フィット感を確認したぞ。

「快適温度」って何?温度表示の真実

JK
先生、さっきから「快適温度」って言ってますけど、あれって何の温度なんですか?
先生
良い質問だ。快適温度というのは、その寝袋で快適に眠れる最低気温のことだ。ただし、これには大きな落とし穴がある。
JK
落とし穴?
先生
快適温度は、個人差が非常に大きいんだ。寒がりの人と暑がりの人では、同じ寝袋でも感じる暖かさがまったく違う。私の経験で言うと、快適温度にプラス5〜10℃の余裕を見るべきだ。
JK
え、そんなに?
先生
例えば、快適温度0℃の寝袋を買ったとしても、実際に快適に眠れるのは5℃くらいまでと考えた方がいい。特に女性や寒がりの人は、ワンランク上の保温力を選ぶべきだ。
JK
じゃあ、夏山で使うなら?
先生
夏の北アルプス(3,000m級)だと、夜間の気温は5〜10℃くらいになる。だから、快適温度-5℃〜0℃の寝袋が適切だ。アルファライト 500Xやエア 300SLあたりがちょうどいいぞ。
JK
なるほど……。
先生
私が初心者の頃、快適温度を過信して失敗したことがある。夏山用に快適温度5℃の寝袋を買って、8月の北岳に持って行ったんだが、夜間の気温が8℃で、寒くて眠れなかった
JK
えー、快適温度より暖かいのに?
先生
そうなんだ。快適温度はあくまで目安で、寝間着を着ていることマットの断熱性能なども影響する。私はその時、薄手のマットしか持っていなくて、地面からの冷気で背中が冷えたんだ。
JK
マットも大事なんですね。
先生
寝袋とマットはセットで考えるべきだ。寝袋だけ高性能でも、マットが薄ければ寒い。逆に、厚手のマットを使えば、寝袋の保温力が少し低くても暖かく眠れることがあるぞ。

永遠のライバル!イスカ vs ナンガ 徹底比較

JK
先生、寝袋といえば「ナンガ (NANGA)」も有名ですよね?「永久保証」って聞いて、すごく気になってるんですけど……。
先生
良いところに気がついたな。日本の寝袋メーカーといえば、東のイスカ、西のナンガと言われるほどの2大巨頭だ。どちらも素晴らしいメーカーだが、設計思想が明確に違う
JK
どう違うんですか?
先生
わかりやすく比較してみよう。

1. 「保証」の考え方

JK
ナンガは「永久保証」ですよね!破れても無料で直してくれるって聞きました。
先生
その通り。ナンガの永久保証は素晴らしいサービスだ。対してイスカは有料修理が基本だ。
JK
え、じゃあナンガの方が良くないですか?
先生
一見そう思うだろう?しかし、イスカには「そもそも壊れないものを作る」という職人気質のプライドがある。縫製の丁寧さや、生地の耐久性テストの厳しさは業界でもトップクラスだ。
JK
なるほど……「直せる」ナンガと、「壊れない」イスカってことですか?
先生
極端に言えばそうなる。実際、私が10年以上使っているイスカの寝袋は、一度も修理に出したことがない。初期品質の高さならイスカに分があると私は見ている。

2. 「形」と「生地」へのこだわり

先生
最大の違いはここだ。イスカは先ほど説明した通り、3Dシルエットによる「フィット感」を最優先している。
JK
ナンガは違うんですか?
先生
ナンガは「生地」に強い。特に「オーロラテックス」という防水透湿素材を使ったモデルが有名だ。
JK
防水……つまり、シュラフカバーがいらないってことですか?
先生
その通り。ナンガのオーロラシリーズなら、結露で濡れてもダウンまで水が染み込まない。これは大きなメリットだ。対してイスカは、「寝心地」を優先して、あえて防水素材を使わず、しなやかなナイロン生地を使っているモデルが多い。
JK
うーん、どっちも魅力的……。
先生
「濡れへの強さ」ならナンガ、「寝心地とフィット感」ならイスカ。こう考えると選びやすいぞ。

3. ジッパーの操作性

先生
地味だが重要なのがジッパーだ。イスカのジッパーは、世界一スムーズだと言われている。
JK
ジッパーなんて、どれも同じじゃないんですか?
先生
全然違う!寒い夜、トイレに行こうとしてジッパーが生地を噛み込んだ時の絶望感と言ったら……。イスカは噛み込み防止パーツの完成度が非常に高く、暗闇でもストレスなく開閉できる。
JK
それは大事かも!トイレ我慢してる時に噛んだら最悪ですもんね。
先生
ナンガも改良を重ねているが、操作性の滑らかさに関しては、今のところイスカが一歩リードしていると私は感じるな。

結論:どっちを選ぶ?

先生
迷ったらこう選べ。
  • イスカがおすすめな人:

    • 寝心地・フィット感を最優先したい
    • 寒がりで、隙間風を防ぎたい
    • 道具としての「作り込み」や「操作性」にこだわりたい
  • ナンガがおすすめな人:

    • 防水性を重視したい(シュラフカバーを持ちたくない)
    • 「永久保証」の安心感が欲しい
    • 街でも使えるファッション性も気になる(ナンガはアパレルも人気)
JK
私は……寒がりだし、寝心地重視だからイスカかなぁ。でもナンガの防水も捨てがたい……。
先生
ははは、贅沢な悩みだ。でも、どちらを選んでも間違いなく日本最高峰の品質だ。最後は、お店で両方に入ってみて、「直感」で決めるのも悪くないぞ。

Q&Aセクション

Q1: 身長が高い場合はどうすればいいですか?

先生
イスカはロングサイズも用意している。身長が175cm以上なら、ロングを選ぶと足元が窮屈にならないぞ。

Q2: 女性用モデルはありますか?

先生
ある。女性は男性より冷え性の人が多いから、同じ温度帯でもダウン量を増やした女性用モデルが用意されている。足元の保温も強化されているんだ。

Q3: 夏山でも使えますか?

先生
ポカラXは-6℃対応だから、夏山では暑すぎる。夏山なら、エア 300SLアルファライト 500Xといった、より薄手のモデルを選ぶべきだな。

まとめ・比較表

JK
先生、結局どれを選べばいいんですか……?
先生
君の登山スタイルと予算で決めるんだ。
JK
うーん、最初は小屋泊メインで、たまにテント泊もしてみたいです。予算は……できれば3万円以内で……。
先生
それなら、アルファライト 700Xが無難だな。重いが、濡れに強くて扱いやすい。慣れてきて、本格的にテント泊をするようになったら、ダウンに買い替えればいい。
JK
なるほど!じゃあ、まずは化繊で様子を見ます!
先生
賢明な判断だ。ただし、お店で必ず実物を見て、中に入ってみること。寝袋は「寝心地」が命だからな。
JK
はい!ありがとうございます!

イスカ寝袋 比較表

シリーズ名 中綿 重量 快適温度 価格帯 おすすめユーザー
アルファライト 700X 化学繊維 約1,300g 0℃ 2万円前後 初心者、車中泊、予算重視、濡れが心配な人
エア 500X 800FPダウン 約560g 0℃ 5万円前後 軽量化重視、長期縦走、ULハイカー
ダウンプラス ポカラX 720FPダウン 約900g -6℃ 4万円前後 秋冬登山、快適性重視、日本人体型にフィット

免責事項

本記事の情報は、執筆時点でのメーカー公式情報および筆者の経験に基づいています。製品の仕様や価格は予告なく変更される場合があります。購入の際は、必ず最新の情報をメーカー公式サイトや販売店でご確認ください。また、寝袋の快適温度は個人差があります。寒がりの方は、ワンランク上の保温力を持つモデルを選ぶことをおすすめします。