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導入
先生、手袋なんて軍手でよくないですか? 安いし、汚れたら捨てられるし。専用のグローブって何が違うんですか? 高いだけじゃないですか?
軍手は「綿」だ。濡れると乾かず、手が冷えて凍傷の原因になる。
そして岩場では滑るし、スマホも使えない。
トレッキンググローブは、「手を守る」「体温を保つ」「道具を操作する」ための精密機器だ。
今日は、岩場用の「レザーグローブ」、雨用の「レイングローブ」、防寒用の「フリースグローブ」を使い分け、その決定的な性能差を解説するぞ。
Image Prompt: 鎖場で鎖を握っている手元のアップ。専用グローブの掌(パーム)の補強部分が鎖に食いついている様子と、軍手が滑っている様子の対比。
第1章: 岩場・鎖場でのグリップ力
1. 合成皮革・天然皮革の摩擦力
トレッキンググローブの掌には、滑り止めのレザーやシリコンがついている。
これが金属の鎖や、濡れた岩に食いつく。
軍手は繊維が滑りやすく、強く握らないと保持できないため、握力がすぐに尽きる。
専用グローブなら、軽い力でしっかりグリップできる。
特にゴートレザー(山羊革)は、摩擦部の耐久性が高く、使い込むほど手に馴染む。
モンベルのアルパインライトグローブやノースフェイスのSummit Alpine Gloveなどは、手のひら全体に天然ヤギ革を使用しており、岩場での信頼性が非常に高い。
2. 手のひらの保護
鎖や岩はザラザラしていて、素手や薄い軍手だと皮膚が切れることがある。
専用グローブは、摩耗しやすい部分が二重に補強されているため、怪我を防げる。
手が血だらけになったら、それだけでテンション下がります。
そうだな。特にクライミングやビレイ(ロープ操作)用のグローブでは、擦れやすい人差し指や親指部分に補強が施されている。
ミレーのトリロジー アイコン プロ ゴアテックス グローブは、岩稜帯のある雪山やハードな使用環境を想定した最上位モデルで、摩耗に強いレザーの掌と完全防水を両立している。
第2章: スマホ対応(タッチパネル)の実用性
今やスマホは地図(YAMAPなど)であり、カメラだ。
1. いちいち外さなくていい
最近のグローブは、親指と人差し指がタッチパネル対応になっているものが多い。
寒い稜線や、雨の中で、いちいち手袋を外してスマホを操作するのはストレスだし、手を冷やす原因になる。
「着けたまま操作できる」のは、現代登山では必須機能だ。
写真撮るたびに手袋外すの、地味に面倒くさいんですよね。
タッチパネル対応グローブは、指先に導電糸(伝導率の高い糸)を使用することで、静電気を伝え、手袋を装着したままでもスマートフォンの操作を可能にしている。
ノースフェイスのバーサロフトイーチップグローブは、全ての指がスマホ対応で、フリース素材で保温性も高い。
2. 反応感度の個体差
ただし、モデルによって反応の良し悪しがある。
指先が余っていると反応しにくいので、「指先がパツパツのジャストサイズ」を選ぶのがコツだ。
そうだ。締め付けられる感覚があると血行が悪くなり、かえって冷えにつながることもあるが、指先に少しゆとりがあるサイズが推奨される。
試着の際は、指が奥までしっかり入り、窮屈に感じないことを確認しよう。
第3章: 雨と風への対応(レイングローブ)
手が濡れて冷えると、ジッパーの開け閉めすらできなくなる。
1. 完全防水の安心感
ゴアテックスやイーベントなどの防水透湿素材を使ったレイングローブ(テムレス含む)。
雨の中で長時間歩いても、手が濡れない。
手が濡れないだけで、体感温度はかなり暖かく感じる。
テムレスは、「透湿」と「レス(蒸れにくい)」に由来する名前で、ポリウレタンコーティングにより高い防水性を持ちながらも、手汗による蒸れを軽減する透湿性を兼ね備えている。
多くのモデルが1,000円前後という手頃な価格で、雪山登山では「常識」と言われるほど普及している。
コストパフォーマンスが非常に高く、耐久性も高い。
ただし、標準的なテムレスはスマートフォン操作に対応していない場合もあるので、その点は注意が必要だ。
そうだ。防寒テムレス(TEMRES 01winter など)は内側に柔らかなボアタイプの裏起毛が施されており、保温性が高く、雪山登山などの寒冷地での使用に特に人気がある。
黒テムレス(TEMRES 02winter / 04advance)は、カラビナを取り付けられるバックルや、雪の侵入を防ぐドローコード付きのカフなど、登山での使用を意識した機能が追加されている。
2. 防風性
風速10mを超える稜線では、フリースや軍手だと風が通って指の感覚がなくなる。
レイングローブ(または防風グローブ)をオーバーグローブとして重ねることで、風をシャットアウトし、保温性を確保できる。
風による体感温度の低下は侮れない。
防風グローブは、フリース素材に防風メンブレンを組み合わせたもので、特に稜線歩きや雪のない冬の低山などで活躍する。
モンベルのウインドストッパートレッキンググローブは、防風性と防滴性に優れており、山だけでなく街中やサイクリングにも適している。
第4章: 季節による使い分け(レイヤリング)
1. 夏山
薄手のメッシュグローブ。
日焼け防止と、岩場での怪我防止がメイン。
通気性が良く、蒸れないものを選ぶ。
そうだ。モンベルのクールグローブやWIC.クール トレッキンググローブは、夏のハイキングや日帰り登山向けで、消臭・UVカット機能を備え、手のひらは合成皮革で保護性能も確保されている。
女性は日焼けを気にする人も多いだろう。UVカット機能がついたグローブは、夏山では必須だ。
2. 春・秋
中厚手のフリースやソフトシェルグローブ。
保温性と操作性のバランスが良い。
そうだな。モンベルのクリマバリア トレッキング サーマルグローブは、防風・透湿性と保温性を兼ね備え、ストレッチ性のある生地で高いフィット感と操作性を実現している。
肌寒い時期や残雪期のトレッキングに適している。
3. 冬山・雪山
厚手のウールインナー + 防水アウターの二重構造。
絶対に凍傷にならないための重装備だ。
手は体の末端に位置し、血流が制限されやすいため冷えやすく、凍傷のリスクが高まる。
体幹が十分に温まっていないと、体は中心部の体温を維持しようとして手足への血流を減少させるため、手足が犠牲になることがある。
濡れた状態での活動や強い風も凍傷のリスクを高めるため、防水・防風対策と、濡れた場合の予備のグローブ携行が重要だ。
そうだ。冬山では、レイヤリングが基本だ。
インナーグローブ(ベースレイヤー)、ミドルグローブ、アウターグローブ(シェル)の3層で構成するのが一般的だ。
第5章: グローブのレイヤリング詳細
1. インナーグローブ(ベースレイヤー)
肌に直接触れる薄手の手袋で、汗を素早く吸収・拡散し、汗冷えを防ぐ。
ウールや化繊素材が推奨され、速乾性とフィット感が重要だ。
スマートフォン操作が可能なものも多く、細かい作業時に便利だ。
そうだ。春から秋にかけての温暖な時期に単体で使用したり、寒い時期にはアウターグローブの下に重ねて保温性を高めたりする。
日焼け対策や汗処理、軽微な怪我の予防にも役立つ。
その通り。綿素材のものは汗で濡れると乾きにくく、凍傷のリスクがあるため避けるべきだ。
2. ミドルグローブ
インナーグローブの上から着用し、さらなる保温性を確保しながら湿気を外へ逃がす役割を担う。
ウールやフリースなどの保温性と通気性を兼ね備えた素材が一般的だ。
樹林帯など比較的穏やかな環境では、単独での使用も可能だ。
最近では、インナーとアウターが一体化した「一体型」や、インナーが取り外し可能な「3wayタイプ」も人気だ。
ただし、柔軟な温度調整を考えるとレイヤリングがおすすめだ。
3. アウターグローブ(シェル)
最も外側に着用し、防水・防風機能によって雪、雨、風などの外的要因から手を保護する。
GORE-TEXなどの防水透湿素材が必須とされている。
耐久性が高く、最も厳しい環境下での使用に適している。
GORE-TEXって、よく聞きますけど何がすごいんですか?
GORE-TEXグローブは、耐久防水性、高い防風性、確かな透湿性を兼ね備えている。
これにより、手が濡れるのを防ぎ、汗の水蒸気は排出されるため、グローブ内をドライで快適に保つことが可能だ。
そうだな。マムートのアストロ グローブは、GORE-TEX WINDSTOPPERを採用しており、耐風性と透湿性に優れている。
手のひらには耐摩耗性に優れた合成皮革を使用し、親指と人差し指はタッチスクリーン操作に対応している。
冬のハイキングからマウンテンバイクまで、季節を問わず使える汎用性の高さが特徴だ。
第6章: ミトン型の特徴
グローブの形状による保温性は、外気に触れる表面積の少なさによって異なる。
1. ミトンの保温性
ミトンは親指のみが独立し、他の4本の指をまとめて覆うため、指が互いに暖め合い、最も高い保温性を提供する。
その通り。ミトンは5本指グローブに比べて操作性が劣るという欠点がある。
この中間として、人差し指だけが独立した「トリガーミトン(3本指)」もあり、ミトンの保温性と5本指の作業性のバランスを取っている。
親指と人差し指が独立していて、中指・薬指・小指がまとめて覆われている形状だ。
ミトンと5本指グローブの中間的な操作性・保温性を持っている。
第7章: 主要ブランドとおすすめモデル
1. モンベル(Montbell)
モンベルのグローブは、日本人の手に合いやすいサイズ感が特徴で、フィット感を重視する方におすすめだ。
日本のブランドだから、サイズが合いやすいんですね。
そうだ。アルパインライトグローブは、GORE-TEX®インサートによる防水性と透湿性、CHAMEECEフリース裏地による保温性、山羊革の掌によるグリップ力と耐久性を兼ね備えている。
単体でもインナーグローブと組み合わせても一年中活用できる汎用性の高いモデルだ。
クリマプラス100 グローブは、高い保温性とストレッチ性を備えたフリース素材のグローブで、トレッキング時のインナーグローブとしてはもちろん、旅行や日常使いにも適している。
2. ノースフェイス(The North Face)
ノースフェイスは、登山からタウンユースまで幅広いシーンで活躍するグローブを展開している。
特に防水透湿性に優れたGORE-TEXやHYVENT素材、濡れても保温性が低下しにくいプリマロフトなど、高機能素材を積極的に採用している。
そうだな。L1プラスガイドシェルグローブは、ゴアテックス採用で、登山中の突然の雨に対応する。
インナーと合わせて使用することで、季節を問わず活躍する。
手のひら部分の強度が高く、岩や枝に触れても破れにくい点も魅力だ。
3. ミレー(Millet)
ミレーは、フランス発のブランドで、高山環境での使用を想定したテクニカルなグローブを多く手掛けている。
断熱性、防水性、器用さのバランスを重視しており、GORE-TEXやDryedge™などの技術を用いて、外部からの湿気を防ぎながら内部の湿気を逃がすことで、手を快適に保つ。
機能性も高い。QD トレック グローブは、軽量でストレッチ性があり、通気性も良いモデルで、夏用のグローブとしても人気がある。
ウォームストレッチトレックグローブは、保温性、防寒性に優れ、タッチパネル対応で滑り止め付きのモデルで、秋冬の寒さ対策におすすめだ。
第8章: メンテナンスと手入れ
グローブを長く使うためには、適切なメンテナンスが重要だ。
1. 一般的な洗濯方法
基本的に手洗いが推奨されている。
ぬるま湯と少量の液体洗剤を使用し、優しく押し洗いする。
洗濯機やドライクリーニングは生地を傷める可能性があるため避けるべきだ。
そうだ。漂白剤や柔軟剤は生地の機能を損なう可能性があるため使用しないこと。
高機能ウェア向けの専用洗剤(例: finetrackの「オールウォッシュ」)が推奨される。
市販の洗剤を使用する場合は、柔軟成分の少ない液体洗剤を選ぼう。
台所用洗剤やウェットスーツ用洗剤は機能低下の原因となるため不適切だ。
洗剤成分が残ると機能低下を招くため、十分にすすぎを行うことも重要だ。
風通しの良い日陰で干す。
強い日光は劣化や変色の原因となるため避けよう。
絞る際は、指先から手首の順に優しく水分を押し出すようにし、強くねじったり絞ったりしないように注意する。
2. 素材別の手入れ
革(レザー)グローブは水に弱いため、基本的には洗濯を推奨されない。
ひどい汚れで洗濯する場合は、洗濯表示に従い、ねじって絞らずに押し洗いし、日陰で平干しする。
乾燥後は、馬毛ブラシで汚れを落とし、レザーオイルを塗ることで、撥水効果や柔軟性を保ち、寿命を延ばせる。
その通り。特に革グローブは定期的な手入れ(オイル塗布など)によって何年も使用することが可能だ。
しかし、指の付け根が破れるなどのダメージが見られた場合は、寿命と判断し買い替えを検討しよう。
GORE-TEXグローブは、ぬるま湯と少量の液体洗剤で手洗いする。
撥水性が落ちてきたら、市販の撥水スプレーを塗布すると良い。
第9章: サイズ選びの重要性
1. ジャストサイズの重要性
登山用グローブのサイズ選びにおいて最も大切なのは、手にぴったりとフィットする「ジャストサイズ」を選ぶことだ。
必要以上に大きすぎるグローブは、物をしっかりと掴むことができず、安全性が損なわれる可能性がある。
そうだ。ただし、締め付けられる感覚があると血行が悪くなり、かえって冷えにつながることもある。
指先に少しゆとりがあるサイズが推奨される。
試着の際は、指が奥までしっかり入り、窮屈に感じないことを確認しよう。
インナーグローブを重ねることも考えないといけないんですよね?
その通り。インナーグローブの使用も考慮してサイズを選ぶことが重要だ。
2. フィット感と操作性
ぴったりとフィットするグローブは、細かな作業(ザックの開閉、地図の確認、スマホ操作など)を快適に行う上で重要だ。
特に鎖場や岩場を掴む際、フィット感が高いことでグリップ力が増し、安全に行動できる。
握る動作を考慮した立体裁断や、手のカーブに合わせた3D構造のグローブは、優れたフィット感と操作性を提供する。
伸縮性のある素材や、しなやかな革(ヤギ革、カンガルーレザーなど)を使用したグローブは、手に馴染みやすく、高いフィット感を実現する。
結論: 手は「第二の足」である
まとめよう。トレッキンググローブの実用性は以下の通りだ。
- 安全性: 岩や鎖でのグリップ力を確保し、滑落を防ぐ。
- 保護: 怪我や日焼け、寒さから手を守る。
- 操作性: スマホやジッパーをストレスなく扱える。
- 快適性: 防水・透湿性で手を濡らさず、蒸れを防ぐ。
- 温度調節: レイヤリングで柔軟な温度調節が可能。
そうだ。特に女性は日焼けを気にする人も多いだろう。
UVカット機能がついたグローブも多い。
たかが手袋だが、快適さと安全性を劇的に上げてくれるアイテムだ。
まずは夏用の薄手と、防寒用のフリースの2双を揃えるところから始めよう。
初心者には、モンベルのクールグローブ(夏用)とクリマプラス100 グローブ(春秋用)の組み合わせがおすすめだ。
日本人の手に合いやすく、価格も手頃で、品質も高い。
冬山に挑戦するなら、アルパインライトグローブとインナーグローブを追加しよう。
テムレスは、コストパフォーマンスが非常に高く、雪山登山では定番だ。
防寒テムレス(TEMRES 01winter)は、1,000円前後で保温性も高く、雨や雪の日のレイングローブとしても使える。
ただし、スマホ操作には対応していない場合が多いので、その点は注意が必要だ。
その通り。グローブは消耗品でもあるが、適切なメンテナンスを行えば長く使える。
特に革グローブは、手入れ次第で何年も愛用できる。
手は「第二の足」だ。しっかり守って、安全で快適な登山を楽しもう。
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